こんにちは。リクシス佐々木です。

 今日は「110歳以上の超長寿者」にみる健康長寿の鍵を、科学的にひもといていきたいと思います。

(写真:PIXTA)

人間の平均寿命は113歳まで延びる

 「超高齢社会」といわれ始めて久しいですが、実際に人の寿命はここ数十年で急激に延びてきました。50~60年前は60代だった平均寿命も今や男女ともに80歳を超え、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年には女性の平均寿命は90歳に届かんという状況です。

 さらに、ここへきて老化に関する研究や医療技術が日々急速に進歩していることから、予測をはるかに上回るスピードで寿命が延びる可能性も指摘されています。

 ハーバード大学医学部のデビッド・シンクレア教授は、情報技術の進歩で健康状態のモニタリング精度が上がり、病気の早期発見・対応ができることにより、10年。「寿命は延ばせる」という新たな常識が広まり、人々が生活習慣を変えることにより、さらに5年。人の細胞・遺伝子レベルの「若返り」回路を作動させることにより、8年。人工臓器などの医療技術の進歩により、さらに10年。合計すると、今後20~30年以内に人間の寿命は現在より33年程度は延び、先進国の平均寿命は少なく見積もって113歳までは延びる、と主張しています。

 昨年の厚生労働省の発表によると、日本の100歳以上(=百寿者)の人口はここ20年で急増しており、2020年には史上初の8万人を突破しました。

 世界的にも、1990年には約9万5000人、2015年には45万人以上の百寿者が存在しており、2100年には2500万人に達すると予測されているのだそうです。

 こういったデータを見ると、「人生100年時代」というのは、決して遠い未来のことではなく、「今、まさに起き始めている現実なのだ」と痛感させられます。

110歳以上の健康長寿エリート、「スーパーセンチナリアン」

 こうした中で最近注目されているのが、110歳を超える超長寿者、「スーパーセンチナリアン」と呼ばれる方々の研究です。

 100歳以上人口が急増している中にあっても、110歳を超えるスーパーセンチナリアンはまだ希少で、国内でも約150人しかいないといわれています。一般的には年齢とともに免疫力が下がり、がんや感染症のリスクが高まります。にもかかわらず、110歳を超えたスーパーセンチナリアンたちはこうした病気にかかりにくく、100 歳時点でも自立した生活をしている人が多いことから「健康長寿のエリート」ともいわれ、その「秘密」を解くための様々な研究が加速しているのです。

 スーパーセンチナリアンの最大の特徴は、単に長生きなだけではなく、生活の自立と認知機能が保たれている人が多いことです。

 日本老年医学会で発表された超百寿者研究結果によると、食事、排せつなど生活の自立性を示す指標としてのADL(バーセル指数)、認知機能を示すスコア(MMSE)について、100~104歳群、105~109歳群、110歳以上群(スーパーセンチナリアン)の3群で比較すると、スーパーセンチナリアンの数値は他の群よりも平均値が高く、 ADL 平均は 80 点を超え、MMSE 平均も 20 点を超えていることが判明しました。

 また、糖尿病の有病率(編集部注:ある時点で疾病を有している人の割合)も格段に低く、スーパーセンチナリアンの有病率はわずか3.5%。一般の高齢者の有病率に比べると6分の1程度にすぎません。

 さらに、一般の高齢者では加齢に伴って、染色体の末端にある細胞分裂に関わるテロメアの長さは徐々に短縮しますが、スーパーセンチナリアンのテロメア長はより長く保たれており、実際の年齢が80歳代でも、60歳代の平均値に匹敵する長さを有していたという研究報告もあります。

超長寿者は免疫システムと血液循環システムが強い?

 なぜ、スーパーセンチナリアンがこれだけの健康長寿を達成できるのか、まだ正確な全貌は解明できていません。超長寿国日本でもその数はかなり少なく、実態調査研究を進めるのが容易ではないからです。

 そんな中でも、最近解明されたいくつかの研究によって見えてきているのは、スーパーセンチナリアンの健康寿命の長さには、免疫システムと血液循環システムの強さが影響しているのではないか、ということです。

 理化学研究所と慶応義塾大学医学部の研究チームは、110歳に到達した超長寿者であるスーパーセンチナリアン7人と50~80歳の5人から直接採血を行い、血液中に流れる免疫細胞を細胞レベルで解析しました。

 その結果、スーパーセンチナリアンは、免疫システムの司令塔の役割を果たすT細胞の構成が50~80歳の人たちと比べて大きく異なっており、中でも、通常は少量しか存在しないCD4陽性キラーT細胞という特殊な免疫細胞が、高い割合で存在していることを突き止めたのです。 

 また、他の研究では、心臓に負荷がかかった際に分泌される物質である「NT-proBNP」の血中濃度が低いほど、110歳以上の年齢に到達する可能性が高まることが分かっています。

 「人生100年時代」が現実のものとなりつつある中、単に長生きするのではなく、100歳を超えて健康であり続けることは、超高齢社会を迎える私たちにとって重要なテーマだと思います。

 健康長寿エリートであるスーパーセンチナリアンから、私たちが今学べることは何なのか。次回の連載でも、もう少し深掘りしてひもといていきたいと思います。

 皆さんからも、このテーマに関するご質問やご感想、ご意見をお待ちしております。

この記事は会員登録でコメントをご覧いただけます

残り2270文字 / 全文2301文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「老いに備える「エイジングリテラシー」講座」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。