読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学ぶシリーズ。今回のテーマは、認知症予防に向けて何ができるか、です。

(写真:PIXTA)

 リクシスの佐々木です。

 アルツハイマー病の新薬が米食品医薬品局(FDA)の承認を得たという大きなニュースが届きました。認知症は多くの人が長い人生を生きるうえでの不安要素の一つですので、朗報だと思います。

 一方で、今回の新薬は認知症の発症そのものを抑えるものではなく、進行を緩やかにするものです。認知症予防については世界中で様々な研究が進められていますが、知的な刺激を継続的に脳に対して与え続けることが有効というのはおおむねコンセンサスになっています。

 例えば、国立長寿医療研究センターの老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)では1997年から同じ人に対して繰り返し調査を行う形で、老化の進み方や老化に伴って起こる様々な病気の発症原因、予防方法を探っています。この中で、知能の維持と心の持ち方の関連についても傾向が見えてきています。
https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/ep/index.html

 先行研究では、言語能力、理解力、洞察力といった長年の生活で身に付ける知能(結晶性知能)は年齢を重ねても上昇し、高齢になっても安定的であるということが分かっています。一方で、直観力や法則を見つける能力といった、新しい情報に触れたときにそれを処理して理解し、操作していく知能(流動性知能)は10代後半から20代前半をピークに徐々に下降していく傾向が見られています。

 国立長寿医療研究センターの西田裕紀子氏のNILS-LSA分析研究(40歳から81歳の男女1591人が対象)では、この結晶性知能や流動性知能の維持にプラスに働く心の持ち方の傾向について、

  1. 抑うつ的にならないこと
  2. 経験の開放性が高い(新しいチャレンジをいとわない、好奇心が強い)こと

 を挙げています。特に、の経験の開放性があるかどうかは重要で、高齢になるほど、そのあとの6年間の認知機能の変化にプラスの影響をもたらすという傾向があります。

 今回は、ちょっと趣を変え、「新しいチャレンジをいとわない」心の持ちようのお手本として、2021年春、京都芸術大学通信教育部の日本画コースを卒業し、大卒の学位を取得された中込恵子さんをご紹介します。中込さんが卒業したのはなんと86歳のときです。そもそも大学に行こうと思われたのはどんなきっかけだったのか、在学中に感じておられたことなどをリクシス副社長の酒井穣がインタビューさせていただきました。

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