読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学ぶシリーズ。今回のテーマは、前回に引き続き介護生活に入る前に「本人の意向」を確認しておくことの大切さについてです。読者の皆さんからのコメントを踏まえ、ポイントを解説します。

リクシスでチーフ・ケア・オフィサー(CCO)を務めている木場猛です。前回は、親の人生を理解することが介護負担の軽減につながることをお話ししました。今回はいただいたコメントをご紹介しつつもう少し考えてみたいと思います。
前回、多くの方が高齢の親の意向について実際に聞くことはできていないということをお伝えしましたが、いただいたコメントの中には実際に聞いた方のお話がありましたのでご紹介します。
(※引用するコメントは読みやすさを考慮し、一部編集している場合があります)
Makitaさんの言うように、実際に親御さんに話を聞いてみても、はっきりした答えは得られないことがあります。
「どんな介護を受けたいか」「この先どう暮らしていきたいか」「一番大事にしていることは何か」のような大きな質問は、老後の生活の方針や介護方針を考える上で非常に重要なことです。しかし、質問される本人ですら考えたことがない場合がほとんどです。
この先どう暮らしたいのかという意向を自分で言葉にできる人はそう多くありません。
ましてや、衰えを自覚してからとなるともっと難しくなるでしょう。年を取って体が衰え、これまでできていたことができなくなっているという時期に、先のことを前向きに考えることができる方は、私が接してきた中でも数えるほどしかいませんでした。
また、K.Gotouさんが苦しい実体験として挙げてくださったことも、現実だと思います。要望をかなえることができず、かといって離れることもできないというのはさぞ、つらかったのではないかと思います。
母を見ていると、確かにこのために生きたいんだという趣味や楽しみがあるわけでもなさそうで、自分に置き換えても、早く楽に死ぬことを願う彼女の気持ちが分からなくもないです。これからモチベーションを持つようにサポートするといっても、限界を感じています。