「ピンピンコロリ」とは、死の直前までは健康に見えた人が急速に死に至る(事故などの外因死を除く)という、専門的には「突然死」に分類されるものと考えられます。ただ、こうした「突然死」は総死亡の10~20%とされており 、私たちの80~90%は「ピンピンコロリ」とはいかないわけです。
ダメおやじさんがおっしゃる通り、働けるうちは働いていくことが、社会とのつながりも切れにくくなりますので、理想です。収入も途絶えず、年金もギリギリまでもらわないで、貯蓄もすることができたら、民間の介護保険など必要ない人生になるかもしれません。
実際に、高齢者の就労意識調査(内閣府、 2016年)では約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しています。定年を超えても働きたいというところまで含めると、全体の約8割になります。誰もが、老後のことをしっかりと考えてのことでしょう。
しかし、平均寿命(男性80.98歳、女性87.14歳/2016年)と健康寿命(男性72.14歳、女性74.79歳/2016年)の差は、大体10年はあります。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、私たちは、平均として10年程度は、日常生活が制限されるような健康問題を抱えながら生きることになります。その間、十分な収入が得られるような仕事が続けられるかどうかは、かなり不安です。
もちろん、ダメおやじさんのご指摘にもある通り、民間の介護保険があればそれだけでOKという発想は危険です。また、できるだけ長く働くことで、公助に頼ることになる期間を可能な限り短くするという発想は、保守本流だとも思います。そして健康なうちは働きながらも、あとは「ピンピンコロリ」というケースは、決して多くはないという認識も求められると思います。
これらも重要なコメントです。消費者の「不安、不確かさ、疑念」をあおることで自社の利益につなげるようなマーケティング手法を、不安(Fear)、不確かさ(Uncertainty)、疑念(Doubt)の頭文字を取ってFUD(ファッド)と言います。当然、消費者としての私たちは、FUDには常に注意する必要があります。
心配のしすぎは問題です。民間の介護保険は「人生に不可欠で、誰にとっても必ず必要」というものではありません。そうした無用な心配を避けるためにも、この課題の背景になっている「日本の社会福祉は危機的な状況にある」という事実について、こうした議論を行うことは有意義だと思っています。
老後に2000万円が不足するという話は、ざっくりとした目安であって、全ての人に当てはまるわけではありません。だからこそ「では、自分自身の場合はどうなのか」を考える必要があります。
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