読者の皆さんと一緒に親、そして自分自身の「老い」とうまく付き合うための「エイジングリテラシー」を学ぶシリーズ。今回のテーマは、介護生活に入る前に「本人の意向」を確認しておくことの大切さについてです。皆さんの体験談や悩みなど、ご意見をコメント欄にお寄せください。

リクシスでチーフ・ケア・オフィサー(CCO)を務めている木場猛です。今回は、親の人生を理解することについて、ご説明いたします。
議論のテーマ(11)
先日、父親が80歳の誕生日を迎えました。新型コロナウイルスへの感染を気にして、一緒に祝うことができず、お祝いはZoomで少し話をする程度で終わってしまいました。健康には気を使っており元気に生活しているようですが、そろそろいい年なので、けがや病気でいつ、介護生活に入ってもおかしくないのではとも思います。その際、どんな介護生活を望むのか、一度ゆっくり話した方がイいと思うのですが、なかなか本人の意向を確認するきっかけをつくれずにいます。
私のような介護職が高齢者のサポートをする際に、最初に行うのは「本人の意向」を確認することです。本人の意向を確認する、というのは、「長く歩けなくなったので買い物に行くのがつらい」とか、「腰が痛くて洗濯物が干せないのでやってほしい」というような当面の困りごとについての要望を聞くだけではありません。
こうした老いに伴う「治らない」症状や困りごとを持った状態で、この先どう暮らしていきたいか、その具体的なイメージを把握する工程です。
もちろん、初めて会った人に「あなたの望みは何ですか」と聞かれて即答できる方はなかなかいません。ましてや、介護を頼むほどの困りごとがある方です。その困りごとについては即答できても、その先でこれからどう暮らしたいかということまでイメージするのは難しいでしょう。
そのため、漠然と質問するのではなく、今の状態になる前に普通に行っていた習慣や好んでいた行動、担っていた役割などを具体的に聞いていきながら、少しずつ今後の意向を引き出していきます。
「これまでの人生」に関する質問を通じて、それぞれの方にとっての望ましい暮らしがどんなものなのかを共有することが、サポートをする際の最初の工程になります。
最初に本人の意向を確認する理由は、2つあります。
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