(写真:PIXTA)
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 公助、共助、自助という言葉があります。それぞれ、公助(国による生活保障)、共助(人の支え合いによる生活保障)、自助(自己責任による生活確保)といった意味です。日本は、北欧には及びませんが、アジアの中では公助に手厚い国でした。しかし、これは過去のものになっていきそうです。

 特に日本の高齢者福祉は、賦課方式といって「現役世代が高齢世代に仕送りをする」という形式で成立してきました。賦課方式は、多数の現役世代が少数の高齢世代を支える時代には機能します。しかし、少子高齢化によって、今後は、高齢者1人あたりの公助に使えるお金が減っていくことは確実です。

 かといって、戦後の都市化の流れの中で、地域コミュニティーは弱体化し、人々が支え合う共助に期待することもできません。結果として、これからの時代は、自助の社会が出現してくることは間違いないでしょう。より具体的には、高齢者として生きていくために必要になるお金は、国だけに頼っていくことは困難になるということです。

介護費用の捻出、貯蓄に加え保険も重要

 そうしたことが叫ばれる中、金融庁の市場ワーキング・グループによる報告書(2019年)が「老後30年間で約2000万円が不足する」と読める試算を発表し「老後2000万円問題」として広く知られることになりました。この「老後2000万円問題」は、あくまでもモデルケースの話であって、正確ではないという批判もあります。しかし一般には、一つの目安として定着したと考えられます。

 恐ろしいことですが、この金融庁による試算には、介護に必要となる費用は含まれていないのです。確かに、日本には公的な介護保険制度があります。しかしこの制度も、今後、保険料をどんどん上げたとしても、これまでの質を維持することさえ難しい状態になってきています。私たちは、どうしても自助を前提として老後について考える必要があるわけです。具体的には、貯蓄だけでなく、保険についても考えていくことが重要です。

 今回は、そんな社会環境の変化に伴い、どうしても考えなければならない、民間の介護保険について考えていきます。民間の介護保険の特徴や選ぶときの注意点などについて、背景とともにまとめています。もちろん、民間の介護保険は、それぞれの自己責任において選ぶべきものなので、あくまでも参考意見としてください。

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