親子関係から、対等な大人同士の関係へ

 石田修治さんには、大変なご経験を共有いただきました。親の介護に悩む多くの人の参考になると思うので、ぜひ、前回の記事のコメント欄を読んでいただきたいです。その大事なエッセンスは「誰もが自分の生活を優先すべきだ(親のために犠牲になってはいけない)」という部分かと思います。

 しかし、こうしたエッセンスに気づくのは、いざ自分が親の介護に直面したときではなく、介護を振り返って後悔するときになりそうです。他者の経験から紡ぎ出された教訓ではなく、自分自身の体験から得られた教訓を優先してしまうのも、人間らしい部分かもしれません。親とはいえ他人であるという事実を腹落ちさせるには、どうしても「これ以上は無理!」という経験が必要だからでしょう。

 この連載の読者の多くは、親や教師、部活の先輩から殴られて育ってきた世代かと思います。現在、そうしたことが犯罪だという認識が定着し、少なくなったのは「自分がされて嫌だったことを、下の世代には行わない」と自らを律してきた人々がいるからです。親子関係から、対等な大人同士の関係への移行を当たり前のことにするのは、今、親の介護に苦しんでいる人々の責務なのかもしれません。

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