無形資産投資が遅れた日本
伊藤氏:2000年に『コーポレートブランド経営』(日本経済新聞出版)という本を出版したのですが、その頃から、もっと言えばそれ以前から問題意識は変わっていません。

一橋大学CFO教育研究センター長。 1975年一橋大学商学部卒業。一橋大学商学部教授、一橋大学大学院商学研究科長・商学部長、一橋大学副学長を歴任。セブン&アイ・ホールディングス、東レ、小林製薬の社外取締役や中央大学大学院戦略経営研究科特任教授も務める。(写真:的野弘路)
篠田氏:どうして、「コーポレートブランド」ですか?
伊藤氏:なぜ「コーポレートブランディング」と言ったのかというと、企業価値を決定づける要因が、それまでの有形資産から無形資産へと、大きく変わってきていたからです。かつては、優れた製品、優れた生産設備を持っていると企業の競争力が高くなり、企業価値も高まっていました。
ところが1990年代になると、米国や欧州では、製品や生産設備といった有形資産ではなく、無形資産、中でも企業としてのブランド価値などが重視されるようになり、企業価値に占める割合も次第に逆転していったのです。そして日本でも1990年代後半には逆転していく時代に入りました。
ただ当時、日本企業の経営者には無形資産に投資するという発想は乏しかった。「モノづくり」が大切と言ってきたから、有形資産にまず目が行ってしまう。本当は「モノづくり=有形資産」というわけではないのですが。
こうしたモノづくり信仰が抜けなかったので、無形資産への投資が遅れたのです。無形資産投資が遅れるということは、すなわち企業価値を高める投資が十分になされてこなかったということ。それが日本の失われた10年、20年、30年の原因となりました。
そして実は、そうしたモノづくり信仰に加えて、会計ルール上の課題もありました。どういうことか分かりますか。
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