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アイデアには異質で良質な知識が必要

昆氏:そして、イノベーターがアイデアを出すには、彼らの脳みそが一番気持ち良い状態で、なおかつ、その脳の中に異質で良質な知識を入れ込んでおく必要があります。我々はサイエンス分野でビジネスをしていますが、例えば「スポーツ分野で徹底的にその道を極めている人たちがどういう気持ちでやっているのか」などについて考えることです。

 もちろん、その異質で良質な知識が入ったとしても、瞬時にアイデアが浮かぶわけじゃないですよ。ですが、あるとき、その人の脳みその中で、まさに大きな流れというのが生まれて、何十億という脳細胞が化学反応を起こしてアイデアをひらめくのです。そのアイデアがビジネスにつながります。

昆政彦(こん・まさひこ)氏
1985年早稲田大学商学部卒。2002年シカゴ大学経営大学院MBA修了、10年早稲田大学大学院博士(学術)取得。05年GEキャピタルリーシング執行役員最高財務責任者(CFO)などを経て、06年住友スリーエム(現スリーエムジャパン)入社。執行役員、財務担当の取締役や副社長を経て、2020年からスリーエム ジャパン社長。グロービス経営大学院教員。米国公認会計士。

 こうした「異質で良質な知識」を脳に入れるというところで、ダイバーシティーが一番重要になるんですね。やっぱりサイエンスという分野の場合、現状どうしても男性が多いのですが、化学の博士号を持っているような男性たちだけで話をしたとしても、イノベーションは生まれません。

 例えば、女性的な考え方や違う文化、サイエンスではない世界の知識を彼らの頭の中に入れておくのです。そこがイノベーションとダイバーシティーの重要な関係性です。

篠田氏:なるほど。これだけ、イノベーションというものを分かりやすく言語化していただけたのは初めての経験です。

 そこで質問なのですが、異質なものが組織や脳に入ってくると、つい排除したくなるものだと思います。あるいは、異質さをうまく受け止められないこともあると思うのですが、そのようなことは課題になりませんか。