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 社外人材によるオンライン1on1(1対1での面談)サービスを提供しているエール(東京・品川)取締役の篠田真貴子氏と、経営にまつわる様々な疑問を議論していくシリーズ。前回まで2回にわたって、「幸せ」研究で有名な日立製作所フェローで、ハピネスプラネット(東京・国分寺)CEO(最高経営責任者)も務める矢野和男氏との対談を掲載。皆さんの意見を募集した。

 今回は篠田氏とともに、皆さんの意見を踏まえながら対談を振り返りたい。

■これまでの議論

[議論]データは予測に役立たない? 幸せ研究の矢野氏/対談前編
[議論]「幸せな組織」をどうつくる? 幸せ研究の矢野氏/対談後編

(写真:PIXTA)

定方美緒(日経ビジネス編集、以下、定方):矢野さんの対談前編では、データの活用を研究してきた矢野さんから「データで未来は予測できない」という言葉が出たことに、驚きました。

篠田真貴子氏(以下、篠田氏):こういった「データで未来を予測できない」という意見に近い発想は、実は別の機会に社会経済を研究している方から聞いたことがありました。

 専門家でない私たちは無邪気に「データで未来が予測できる」とつい考えてしまいがちですが、仕事として「予測」と真剣に向き合ってきた方は、もはや「予測できない」という考えに至っているのかなと思いました。

 ただ、もう一度矢野さんの主張について、記事を振り返りながら整理すると、蓄積したデータで「未来を予測できない」とは言っているけれども、データが「使えない」ということは言っていないのですよね。

 できる限りの予測はするのです。ただ、「当て」にいくための予測ではなくて、「これまでの延長線上だとこうなる」という予測をすべきなのですよね。予測と現実の「ずれ」は必ず生まれるので、その「ずれ」に着目しながら、予測を永遠に繰り返していくわけです。

 組織や経営について「予測」を当てはめると、「予算」や「計画」が予測に当たります。予算や計画と現実を比べて、結果的にずれが生じることはよくあります。

 その際、予算や計画と現実がずれてくると、現実を何とか予算や計画に合わせようとするケースが多いのではないでしょうか。予算未達になりそうだと、強引に売り上げを作るための工夫をしたり、逆に予算が余ると、本来なら必要性が乏しいことにお金を使ったり。最悪の場合、現場に大きな負荷がかかり、不正行為に走ってしまったという話も聞きますよね。

 矢野さんが言うように、「予測は当たらない」という前提に立てば、本来、重要なのは現実を予測に合わせようとするのではなく、むしろ「ずれ」に着目して、予測を現実に合わせて修正していくことではないでしょうか。

定方:予算や計画は、組織の中では絶対視されることが多く、現場が無理をすることも少なくありません。むしろ、予算や計画を柔軟に変えていくべきではないか、ということですね。

 読者の方からも、こんな興味深いコメントが寄せられています。

 「私の勤める会社では『中期計画』という3年計画があり、多くの関係者が多大な工数を掛けて精密に3年先の計画値(必要な材料の数や経費・人員など)を計算しています。そして、1年後に大きく外れたら(必ず外れるのですが)、なぜ外れたのかを検討させている」(bearbearさん)

(※読みやすくするために、引用するコメントは一部を加筆・修正しています)