社外人材による1on1(1対1での面談)サービスを提供しているエール(東京・品川)の取締役の篠田真貴子氏と、経営にまつわる様々な疑問を議論していくシリーズ「篠田真貴子の『経営の“常識”にツッコミ!』」。このシリーズでは、篠田氏が経営者に疑問をぶつけたり、読者の皆さんと意見を交わしたりしながら、様々な切り口でニューノーマル(新常態)ともいわれる時代における経営や組織の在り方について考えていきます。

 前回、従業員の8割がリモートワークに移行したという、新生銀行の工藤英之社長にリモートワークにかじを切った理由や働き方の実態を聞きました。この篠田氏と新生銀行の工藤英之社長の対談と読者の皆さんのご意見を基にしながら、(1)なぜリモートワークの導入を進めるべきなのか、(2)リモートワークを定着させるためには、どのような取り組みが必要になるのか、という2つのポイントを中心に、リモートワークの課題と対処法を篠田さんとともに整理します。

 ぜひ、皆さんもご意見をお寄せ下さい。

(写真:PIXTA)
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リモートワークで多様性を身体レベルで「体感」

定方美緒(日経ビジネス編集、以下、定方)前回、新生銀行の工藤英之社長にリモートワークをテーマに話を聞きました。ただ、そもそも新型コロナウイルスの感染拡大以前から、国なども普及の旗振りをしていましたよね。

篠田真貴子氏(以下、篠田氏):リモートワークは個別の会社の「事業戦略」の中で位置付けるというのが、大前提です。そもそも、「普及に向けて国が旗を振っているから」という理由で導入するようなものではありません。

 その上で、「人と企業の関係性」をしっかりと考える必要があります。どういうことかと言うと、新型コロナという特殊要因を一旦脇に置いておけば、これまでの働き手のモデルは、「健康で、起きている時間を全て仕事に投入できる人(男性)」を中心に考えられていました。そのような働き手を前提に、組織を構築してきたわけです。しかし、もはやそのような働き手ばかりではなくなっています。

 今までの働き手モデルから少しずれる人、例えば、「女性」や「年配者」、「病気を患っている人」「外国人」などに対しても、しっかりと働ける環境を組織として用意していかないと、労働力を確保できない時代になっています。

 「通勤しなくていいなら、勤務時間は確保できる」「通勤できる体力まではないけど、働ける」……。様々な事情を抱え、これまでの働き手モデルに合致しない人材も雇用していくことは、リモートワークという選択肢がないとほとんど無理だと考えていいのではないでしょうか。

 そのため、10~15年ほど前から、リモートワークの必要性は指摘されていました。だからこそ、政府も「働き方改革」という掛け声の下で普及に向けて旗を振っていたわけです。

 そうした状況の中で新型コロナの感染拡大が起きて、一気に広がったという流れですよね。