オンラインの1on 1(1対1の面談)サービスを手掛けるエール(東京・品川)取締役の篠田真貴子氏が、経営にまつわる疑問をキーパーソンに投げかけていくシリーズ。前回まで前編後編の2回にわたって、三井物産労働組合(通称MPU)の塩澤美緒委員長との対談を掲載した。

 労働組合の活動というと、いわゆる“ベア(ベースアップ)”を巡る春闘のイメージが強い。だが、塩澤委員長は「報酬は社員の多様なニーズの1つ。会社で得られる経験・成長・生活の質も含めた包括的価値で捉える必要がある」と、「エンゲージメント」を重視していることを語った。

 近年、労働組合の組織率の低下も話題になっている。労働組合の役割について、篠田氏と共に対談を振り返った。

三井物産労働組合の委員長、塩澤さんは、組合の活動内容について、報酬に関することは組合員の多様なニーズのうちの1つで、むしろ包括的なエンゲージメントを高めることを重視していると話していました。こうした三井物産労働組合の活動を聞いて、どのように感じましたか。

篠田真貴子氏(以下、篠田氏):三井物産の労働組合が、社外にさらなる活躍の場があるのなら社員が転職するのは当たり前であると位置付けて、組合のパンフレットにもそううたっているのは印象的でした。そして、会社側への要求の軸にしているものが、金銭的な報酬面の待遇改善だけではなく、働く環境など社員のエンゲージメントを高める施策であるというのは、私が思い描いていた労働組合のイメージとは異なっていました。

エール取締役の篠田真貴子氏(写真:的野弘路)
エール取締役の篠田真貴子氏(写真:的野弘路)

 ただ、そもそも労働組合が果たすべき役割の原点に立ち返れば、それは必然の流れとも言えるような気がします。労働組合は何のためにあるのか、というと、従業員の声を経営層に届け、働く環境をより良くしていくことですよね。

 そのためには、経営陣に対するしっかりとした交渉力を持っていなければなりません。つまり、組合員をしっかりと束ねる求心力が必要になる。組合員のニーズに忠実にならなければ、求心力は高まりません。

 日本型雇用の特徴の1つである企業別の労働組合の原型は、戦後に形作られてきたものだと認識しています。働く人が会社に望むものは戦後から大きく変わってきているはずなのに、「ベア」や「ストライキ」といった組合活動の方法論は、それほど変わっていない。そうした状況がある中、三井物産の労働組合は、時代に合った活動を模索しているのだという印象を持ちました。

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