篠田真貴子氏が経営にまつわる様々な疑問をキーパーソンに投げかけていくシリーズ。前回まで、SDGs(持続可能な開発目標)をテーマに前編後編と大和証券グループ本社のSDGs担当役員、田代桂子副社長との対談を掲載した。

 田代氏は「証券会社としてSDGsの分野でできることはたくさんあるのです」と語りつつ、「放っておくと何も動きません」と指摘。若手のアイデアをビジネスとして実現させてきた同社の歴史や、一部署にとどまらず社全体として推進していくことの必要性について説明した。

 「SDGsという言葉がファッションのように流布しているのではないか」という篠田氏の問題意識から実施した今回の対談。篠田氏とともに、企業とSDGsとの関係を振り返る。

(写真:Shutterstock)

対談で、田代桂子副社長は「証券会社にできることはたくさんある」と言っていました。対談を振り返り、企業がSDGsに真剣に取り組んでいくためにはどのような考え方が必要だと感じましたか。

篠田真貴子・エール取締役(以下、篠田氏):対談で、田代さんは「若者がこれをやりたいと言ったときに、せっかく出た良い意見を、上司たちがつぶすことのないようにしないといけない」とおっしゃっていましたよね。

エール取締役の篠田真貴子氏(写真:伊藤菜々子)

 この言葉はすごく良いなと思いました。大和証券が日本で初めて取り扱った個人投資家向け「ワクチン債」も、グループ内の若手が「やりたい」と手を挙げたのがきっかけだという歴史も説明していただきました。そうした意識が、SDGsを推進していくためには必要な企業としての姿勢だと感じました。

 企業の新しい取り組みというのは、時代の風を本当に捉えていないと立ち上がらないものです。特に大企業の場合、既存事業に競争優位性があることも多いので、時代のちょっとしたさざ波ぐらいだったら、わざわざ新しいことに取り組まなくてもいいということになりかねません。

 大企業であるけれども、そうした時代の流れをキャッチした社員個人の声をすくい上げて組織として取り組んできたことで、時代の要請を的確に捉えて事業化するという土壌ができていたのだと思います。大和証券グループがSDGsに組織として力を入れている背景に、私自身も理解が深まりました。

ただ、事業としたときに、企業がSDGsに力を入れてもうかるの?という指摘が多いように思います。読者からのコメントも寄せられています。

(※引用するコメントは読みやすさを考慮し、一部編集している場合があります)


KP
 
大事だよねと聞かれれば、答えはイエスでしょう。
ただし、企業、しかも証券会社がやるのだから、「で、それもうかるの?」という問いに真剣に取り組んで答える必要があるよね。まずやってないだろうけれど。これがないから、外向けにそれっぽいことをやるだけで、当然に財務的な結果は伴わない単なるコストになるよね。

篠田氏:大事なポイントですよね。もちろん、企業としてもうけがないという状況はありえないという私も考えています。

 田代さんは例えとして、SDGsへの関心が高まれば、利回り3%の商品よりも、環境に配慮している利回り1%の商品を選ぶ人が増えていくかもしれないとお話しになりました。

 田代さんがおっしゃっていたことには、2つの側面があると思います。

 1つは商品を選ぶ際、顧客は「経済的メリット」だけを求めているのではない、という側面です。利回りが3%か1%かということだけではなくて、「このようなビジネスには加担したくない」という思いも、商品を選ぶ際の選択基準になっているということだと思います。

 もう1つは、社会の価値観の変化に合わない行動をしている企業は、短期的にはもうかるかもしれないけれど、長期的にはその行動によってマイナスになることが起きるという側面です。

 1990年代でさえ、米スポーツブランド「ナイキ」の製品をつくっていたアジアの工場で児童労働が発覚し、不買運動につながったことがあります。長い目で見たときに、SDGsを念頭において事業をしたほうが、もうかっていくはず。そうであれば先陣を切っておいたほうが事業としても成功するはずです。

 私の知っている金融関係の方は、米国や欧州では「ESG(環境、社会、企業統治)投資はもうかる。以上!」と議論に決着がついていると言っていました。日本では「ESG投資はもうかるのか」ということが議論になりますが、米国や欧州ではむしろ、どれだけ組織がESGに本気で取り組んでいるのかを見極めようという段階に移っているのです。

読者からは、ファッションでも何でもよいから、そういうことからでもやっていかないといけないという指摘もありました。


KEN.A
 
SDGsがゴールを迎えるときが来るのか、現在の進捗だと難しいと認識しているか、そうでないか、その意識の差は極めて大きい。
2020年前期あたりで見て、アフリカにおける達成率の低さは、見ているだけでは解消することはない。
太陽光含めた再生エネルギー施設を大規模に使える立地へ安全な水の提供について、いろんな企業が挑戦できる規模での投資をしてくださる方の存在も大きい。
最初は、なんとなくバッジをつけていてもいいと思います。少しでも意識が高まると、認識はまた変わるものだと考えています。

篠田氏:確かに、そのようなご意見ももっともだと思います。でも、ファッションでもいいからバッジを付けて、SDGsの取り組みが可視化され、キーワードが広まることが大事、という段階は、そろそろ終わりにしないといけないのではと思います。

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