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 日経ビジネスが主催する「日経ビジネスLIVE」のWebセミナー(ウェビナー)シリーズ「ニューノーマル時代の成長戦略~新たな長期的価値の創造~」(Platinum Partner:EY Japan、Gold Partner:ServiceNow Japan)のDay7が8月25日に開催され、7月2日のDay1から全7回の日程が終了した。全体で1万6000人を超える登録があり、37人の経営者・有識者が登壇した(パートナー・セッションを含む)。各セッションでは視聴者から多数の質問が寄せられ、登壇者がリアルタイムに回答した。

 以下では「企業のDX実現に向けた期待と課題」をテーマに、Day7の第2セッションに登壇した経済産業省の大臣官房企画官でデジタル戦略担当の津脇慈子氏、SOMPOホールディングスのグループCDO(最高デジタル責任者)の楢﨑浩一氏、ビービットで東アジア営業責任者を務める藤井保文氏の議論を紹介する。

 まず、「企業にとってDXとは何か」というテーマで議論が進んだ。津脇氏はこれに対して、「サービスのマイクロ化が起こる」との考えを述べた。「個別の細かいニーズを拾い、サービスをそれに合わせてカスタマイズできることが重要になってくる」と指摘。「細かいニーズをすべてかなえられるだけの選択肢を提供でき、そのために生産やサービスを究極まで効率化することがDXだと考えている」と語った。

「企業のDX実現に向けた期待と課題」を議題に、経済産業省の大臣官房企画官でデジタル戦略担当の津脇慈子氏(左)、SOMPOホールディングスのグループCDOの楢﨑浩一氏(中央)、ビービットで東アジア営業責任者を務める藤井保文氏(右)が議論した

 楢﨑氏も津脇氏の意見に同意し、「DX化で究極の『私だけ』のサービスが提供できるようになる」と述べた。その上で、「DXが進むと、企業や組織の規模で勝負しなくてよくなる。相手にする顧客がマイクロ化することで、サービスや商品を提供する企業側もマイクロ化していく」とみる。

 一方で藤井氏は、「DXの目標は新しい顧客体験の提供だ」と主張。「優れた顧客体験を提供しないと、サービスや商品を長く使ってもらえず、顧客データが得られない。そうなると、顧客の情報に合わせたサービスの提供ができず、サービスのマイクロ化ができなくなる」と指摘した。そして、「顧客体験を向上させることで、自然とサービスなどの提供システムも変わっていく」と話し、あくまで企業にとってDXはその顧客体験向上の手段だと強調した。

デジタル技術は難しくない

 次に、DX化の議論になると必ず付いて回る「デジタル化によって置いていかれる人々にどう対応するか」というテーマに話が及ぶと、経済産業省でキャッシュレス決済の普及に携わっていた津脇氏は、「私もキャッシュレス決済の推進をしていたときに悩み苦しんだ」と振り返った。しかし、実際にキャッシュレス決済の導入が進むと、思っていた以上に高齢者の方もキャッシュレス決済を使ってもらえたという。「家族に使い方を教えてもらったという高齢者が多かった。お互い教え合うなどして使っていけるサービスや商品を提供していくことが必要だと感じた」という。

 藤井氏も、「実際はDX化したサービスも、高齢者が使えているケースは思った以上に多い。まずはDX化を進めてから考えるべき」と述べた。さらに、「DX化して業務を効率化することで、今まで以上に顧客に接する時間が増え、より良いサービスにつながる」こともあるといい、「すべてをAIに任せるようなDX化ではなく、デジタルとリアルの融合が大切になる時代が来る」との見解を示した。

 楢﨑氏は、「毎日使っているスマートフォンがそもそもデジタルのど真ん中。数十年前のスーパーコンピューターができないようなことができるものが、皆さんの手のひらにある」と説明。最後に、「デジタル技術を特殊な技術のように難しく考える必要はない」との持論を述べ、セッションを締めくくった。