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 日経ビジネス主催「日経ビジネスLIVE」のWebセミナー(ウェビナー)シリーズ「ニューノーマル時代の成長戦略~新たな長期的価値の創造~」(Platinum Partner:EY Japan、Gold Partner:ServiceNow Japan)が8月25日に開催された。Day7となるこの日のテーマは「デジタルトランスフォーメーション(DX)で変わる世界」。第1セッションでは「デジタル技術と社会変革」をテーマに、ヤフーを傘下に持つZホールディングス社長の川邊健太郎氏と、電子政府で先行する東欧のエストニア事情などに詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティング専務執行役員の南雲岳彦氏が対談した。

 冒頭、ヤフーの社長も務める川邊氏が、「今回の新型コロナウイルスの流行でデジタルの必要性がより明確になった」と分析した。「これまでのデジタルはいろいろな産業の中での1分野でしかなかった。ここ数年はどの産業でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が声高に叫ばれていたが、そこまで進んでいなかった」という。

「新型コロナウイルスの流行でデジタルに対する世の中の捉え方が変わった」とするZホールディングスの川邊健太郎社長

 「特に医療と教育、行政はデジタル化が遅れていて、新型コロナとの相性が悪かった」と指摘。これらの分野の共通点は「対面を理想としているところにある」と説明した。その上で、「対面が素晴らしいか否かを決めるのは顧客。顧客は対面が必ずしもユーザーファーストとは限らないとすでに感じ始めている」と述べた。

 一方で欧州の電子政府について豊富な知見を持つ南雲氏は、コロナ禍で日本でも国民が現状に危機感を持ったと分析する。「新型コロナに伴う給付金の申請(の対応の遅さ)やなつ印するためだけの出社などが、デジタル化が生命や健康に関わる問題だと認識された」

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの南雲岳彦専務執行役員は、デジタル化を進める国の目的について「ウェルビーイング(幸福)」にあると指摘した

 南雲氏は、東欧バルト三国の一角で、電子化が進むエストニアの事例を紹介した。エストニアでは税務申告の95%が電子化され、選挙では有権者の44%がインターネットで投票。行政サービスの99%がデジタル化されている。デジタル化を進める国の目的は、「ウェルビーイング(幸福)」にあると指摘。「デジタル化することで、これまで紙や対面でのやり取りに費やしていた時間を、自分の好きなことや、本来得たい価値のために使える」と説明した。そのうえで「日本もテレワークの普及などで、必ずしも大都会に住む必要もなくなった。満員電車から解放されるチャンスでもある」と、新型コロナを機に一気に広がるデジタル技術の活用が、個人の生き方を変える好機になるとの考えを示した。

「個人が使えばデジタル化は進む」

 次に、視聴者からの質問に川邊氏と南雲氏がそれぞれ回答した。まず、「デジタルを用いて変革をする際にぶつかる文化の壁には、どのように挑戦し、どう折り合いをつけるべきか」という企業や社会の文化に関する質問が出た。川邊氏は「体験してもらってから考えてもらうことに尽きる。多くの場合は『こんなに便利なんだ』と思い、元には戻れなくなる。無理にでも使ってもらうことが大事」と回答した。

 「社会のデジタル化でやってはいけないことは何か」という質問に対し、南雲氏は「国家のために個人データを使って国民が監視される社会に日本は踏み出してはいけない」と答えた。併せて「個人のデータはあくまで個人のもの。社会のために使う時には匿名性の担保やプライバシーへの配慮など、個人の自由を守った形でのデータ利用や社会デザインをすべきだ」とも述べた。

 対談の最後に川邊氏は、デジタル変革に際して、1人ひとりがデジタルツールを使うことの重要性を主張した。「ツールは会社や行政が提供してくれる。個人はツールをいかに使うかが大事。中国ではデジタル化が進んでいるが、個人が新しいアプリやサービスを使っている。日本でも個人がデジタル化した生活を自ら実践すれば、日本全体もデジタル化していく」という。南雲氏も、「幸せになるためにデジタル技術をどう使うかが重要。個人が新しいものを作っていくという気概を持つことも大事になる」と述べ、このセッションを締めくくった。

 この日のセッションは、事前登録した視聴者を対象にライブ配信された。

■お知らせ

 ご好評いただいた日経ビジネスLIVE「ニューノーマル時代の成長戦略~新たな長期的価値の創造~」の特別セッションの開催を決定しました。日経ビジネス電子版の人気連載「細川昌彦の『深層・世界のパワーゲーム』」の著者、細川昌彦・中部大学特任教授を招いてオンラインセミナーを開催します。細川氏は、経済産業省(旧通商産業省)で通商政策局米州課長や貿易管理部長などを歴任した経験から、深刻化する米中対立の深層を早くから分析。中国の通信大手ファーウェイの問題などに象徴される技術覇権争いや、それに伴う安全保障問題を鋭く指摘してきました。米中の対立が激しさを増す中、日本企業は今後、どのような備えをしていくべきか。細川氏が得意とする対韓国の輸出管理の問題や、米国の大統領選の行方などについても最新の情報をお伝えします。

■開催概要
日経ビジネスLIVE
「ニューノーマル時代の成長戦略~新たな長期的価値の創造~」

―特別セッション―
 「米中対立の深層 ビジネスを揺さぶる新秩序」

※本セッションは日経ビジネス電子版の有料会員限定です

日時:2020年8月28日(金) 16:00~17:00
講師:細川昌彦・中部大学特任教授(元・経済産業省中部経済産業局長)
会場:Zoomを使ったオンラインセミナー
主催:日経ビジネス
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員は無料(事前登録制、先着順)
※有料会員でない方は、まず会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)。

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