日経ビジネス主催「日経ビジネスLIVE」のWebセミナー(ウェビナー)シリーズ「ニューノーマル時代の成長戦略~新たな長期的価値の創造~」(Platinum Partner:EY Japan、Gold Partner:ServiceNow Japan)のDay4が7月22日に開催された。第3セッションのテーマは「日本型雇用はもう限界? コロナ後の課題とは」。日本労働組合総連合会(連合)会長の神津里季生氏、東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏、三菱総合研究所の政策・経済研究センター長の武田洋子氏が、日本の雇用に関する現状や問題点について議論した。(今後開催のセッションはこちら

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本の雇用は大きな影響を受けている。5月時点の休業者数は423万人にのぼる。武田氏はこの状況について、「この先徐々に休業者が失業者になっていくのではないか」との見方を示した。「休業者の約半数が非正規労働者。雇用の悪化の影響が特定の人々に集中している」という。

 神津氏も同様に、不安定な雇用形態や立場の弱い労働者への影響を指摘した。現状起きている雇い止めや内定取り消し、適切な補償がない休業などについての問い合わせが、例年の倍近くのペースで連合に届いているという。このような労使間の問題が起こる原因は、「労働基準法などのルールが、労使ともに曖昧なまま運用されてきたから」と、神津氏はみている。

コロナ禍で激変した日本の雇用環境について議論した三菱総合研究所の政策・経済研究センター長の武田洋子氏、連合会長の神津里季生氏、東京大学大学院教授の柳川範之氏(写真左から)
コロナ禍で激変した日本の雇用環境について議論した三菱総合研究所の政策・経済研究センター長の武田洋子氏、連合会長の神津里季生氏、東京大学大学院教授の柳川範之氏(写真左から)

 コロナ禍によって「若者は自身の将来がどうなるんだろうという不安感を持った」と語ったのは柳川氏だ。かつては仕事を頑張ったり、能力を身に付けたりして売り上げを伸ばせば、ポストが上がっていくという道筋を描けたが、今は新型コロナで企業活動ができず、頑張りようがないという。「感染拡大させない形で経済活動できるようにして、活動すれば報われる仕組みにできるかが大事」(柳川氏)

話題の「ジョブ型雇用」、言葉だけ先行との指摘も

 新型コロナによって働き方が変わる中で、注目されているジョブ型雇用について話が及ぶと、武田氏は「職務を明確化し、成果をベースに評価する制度は間違いなく必要」と主張した。リモートワークなど時間や場所にとらわれない働き方が増えていくことで、業務の過程の見える化や、成果で評価する人事制度が求められてくるという。

 もう一つの理由として人材のミスマッチを挙げた。中長期的に見ると、人口減少による人手不足とAI(人工知能)などの社会実装で、事務職や製造職では人材の過剰供給が起こる一方で、専門職の人手不足が深刻化する。「こうしたミスマッチの解消のためには、いつでもやり直しができて、スキルを身に付ければ評価される制度や環境が必要」(武田氏)。

 柳川氏も「ジョブ型に変わっていくという大きな流れは正しい」とした。「時間や場所にとらわれないなど、多様な働き方が出てきた。そのためにどういう仕組みが必要なのかを考えていくことが重要」(柳川氏)。加えて、「社外からも評価される専門性が必要になってくる」と言い、リカレント教育(社会人の学び直し)の重要性を唱えた。その一方で、「ジョブ型雇用という言葉だけが先行してしまっている」とも現状を分析する。「ジョブ型雇用にすることで達成すべき目標を、しっかりと議論していくことが一番望ましい」という。

 「一挙にジョブ型雇用にするのではなく、従来型雇用の良いところも残しつつ、一部はジョブ型雇用も導入するというハイブリッドにしていくことは必要」。神津氏は最後にこう述べ、「日本の雇用の問題は働いている人がこういう仕事をしたいという選択権を持っていないことだ」と主張した。「自分になじまないと思った仕事でも、転職の失敗を恐れてとどまっている人は多いのではないか。雇用のミスマッチが色濃くなっていく中で、失業なき労働移動を目指すべきだ」と主張した。

<span class="fontBold">「日経ビジネスLIVE」とは:</span><br>「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
「日経ビジネスLIVE」とは:
「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 日本を代表する大手企業トップ、著名有識者がライブで本音を語り、視聴者の質問にも答えるイベント「日経ビジネスLIVE」。7月2日から合計7回(予定)にわたり、オンラインで開催する(参加費無料)。テーマは、「ニューノーマル時代の成長戦略~新たな長期的価値の創造」(主催:日経ビジネス、Platinum Partner:EY Japan、Gold Partner:ServiceNow Japan)。ぜひ、ご参加ください。

 8月18日(火)開催のDay6は、「ニューノーマルの企業価値」をテーマに議論する。最初のセッションでは、「共創経営」を掲げ、各ステークホルダーとともに企業価値向上を図る丸井グループの青井浩社長が登壇。一橋ビジネススクールの楠木建教授と議論する。次のセッション「(仮)財務指標に表れない新時代の企業価値(Partner Session)」には、エーザイ専務執行役CFO(最高財務責任者)で早稲田大学客員教授も務める柳良平氏、コモンズ投信会長の渋澤健氏、EY Japan アカウンツ・リーダーの瀧澤徳也氏が登壇する。

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■開催概要

日経ビジネスLIVE
「ニューノーマル時代の成長戦略~新たな長期的価値の創造~」

日時:2020年7月2日(木)~8月中 全7回開催(予定)

会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
主催:日経ビジネス
Platinum Partner:EY Japan
Gold Partner:ServiceNow Japan
受講料:無料 ※事前登録制(先着順)

■プログラム Day6=8月18日(火) 「ニューノーマルの企業価値」

13:10-14:00 (仮)革新と企業価値向上をどう両立させるか

青井 浩氏 丸井グループ代表取締役社長 代表執行役員 CEO
楠木 建氏 一橋ビジネススクール 教授

14:10-15:00 (仮)財務指標に表れない新時代の企業価値(Partner Session)

柳 良平氏 エーザイ 専務執行役 CFO(最高財務責任者) 兼 早稲田大学客員教授
渋澤 健氏 コモンズ投信 取締役会長 兼 ESG最高責任者
瀧澤 徳也氏 EY Japan アカウンツ・リーダー

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 Day7は8月25日(火)開催。テーマは「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。第1セッションでは、企業や自治体を対象とする各種データ事業を強化するZホールディングスの川邊健太郎社長、電子政府化が進むエストニアの事情に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの南雲岳彦専務執行役員が登壇。「(仮)デジタル技術と社会変革」をテーマに議論を繰り広げる。

■プログラム Day7=8月25日(火)

15:10-16:00 (仮)デジタル技術と社会変革

川邊 健太郎氏 Zホールディングス 代表取締役社長 CEO
南雲 岳彦氏 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 専務執行役員

セッション2 調整中

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>>他の日のセッションについてはこちらをご覧ください


この記事はシリーズ「[LIVE]あなたは何を聞く? 旬の経営者とライブトーク」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。