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 「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトにした「日経ビジネスLIVE」のWebセミナー(ウェビナー)シリーズ「ニューノーマル時代の成長戦略~新たな長期的価値の創造~」が7月2日開催され、アイリスオーヤマの大山健太郎会長と一橋ビジネススクールの楠木建教授が「危機に強い持続的経営とは」をテーマに対談した。対談では、新型コロナウイルスの感染拡大による自粛で経済活動が縮小し、多くの企業が厳しい状況にある一方で、マスク生産などで急な需要に対応、コロナ禍でも業績が堅調なアイリスオーヤマの経営のあり方などについて議論した。

Webセミナー(ウェビナー)で危機と経営について議論したアイリスオーヤマの大山健太郎会長(左)と一橋ビジネススクールの楠木建教授

 大山会長が対談の中で発したのが「選択と分散」というキーワードだ。これまで日本企業は効率化を追求する「選択と集中」を推進してきたが、そうした言葉とは対照的である。アイリスオーヤマが実践する具体的な例として、大山会長は平時の工場稼働率を7割にとどめる考え方を紹介。余裕を持たせることで、「大きな需要の変化があったときに対応できる。(急にくる)チャンスを逃さないことの方が、足元の効率化よりもトータルで見ると大きな意味がある」と述べた。また、大山会長は「『選択と分散』は、(危機時も含めた)いろんな局面で消費者の役に立つことを念頭に置いている。当社の企業理念の第1条にある、いかなる時代環境であっても利益を出す考えに則している」と強調した。

生活者目線が次のアイデアにつながる

 こうした大山会長の考えに対して、楠木教授は「多くの企業が稼働率は高い方がよいと取り組んできた中で、アイリスオーヤマは稼働率を抑え、他社との違いを出してきた」と解説。そのうえで日本で「選択と集中」が進められてきた理由として「資本市場における株主からのプレッシャーや今のベストプラクティスなどに経営者が反応しやすくなっている」という背景があると話した。アイリスオーヤマが非上場企業である点も、独自路線を貫くことを可能にした一因との見方を示した。

 対談では、視聴者から100件近い数の質問があった。ある視聴者は、サーキュレーターやクリア収納ケースなど数々のヒットを生み出す源泉となってきた、消費者を第1に考える同社の「ユーザーイン」発想に注目し、そうした発想はどのようにして組織の中から出てくるのかとの質問を寄せた。大山会長は「私もみなさんも全員が生活者なんです」と回答、クリア収納ケースを例に挙げ、かつて、自らが外出する前に探していたセーターがなかなか見つからず困った経験があったことが開発につながったと紹介した。自身や社員がメーカー側の人間でありながらも、同時に消費者目線を持つことが新たなアイデアにつながると強調した。

 楠木教授はアイリスオーヤマの家電事業について、これまで大手家電メーカーがさまざまな製品を開発してきた中で、新たに生まれた問題に注目。消費者もほとんど使わないような機能が付いたオーバースペック、ハイスペックの製品があふれる一方で、使う機能だけに絞ったアイリスオーヤマの家電の販売が伸びていると指摘した。楠木教授は、新型コロナの感染拡大を受けた生活や考え方の変化が、「たくさんの機能が付いた家電がよいものだとする思い込みを揺さぶるきっかけになるかもしれない」とし、アイリスオーヤマが提供してきた価値がより広く受け入れられるようになっていくのではないかとの考えを示した。

 この日のセッションは、事前登録した視聴者を対象にライブ配信された。

「日経ビジネスLIVE」とは:
「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 日経ビジネスLIVE「ニューノーマル時代の成長戦略 ~新たな長期的価値の創造~」のDay2を7月9日(木)に開催します。第1セッションでは、もの作りの根幹を支える工作機械大手・DMG森精機の森雅彦社長と気鋭の経営学者である早稲田大学大学院の入山章栄教授が、「もの作りが変わる~コロナが加速する経営のデジタル化」をテーマに議論。次のセッションでは、オンライン生命保険のライフネット生命を創業し、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務める出口治明氏と、外資系企業やほぼ日(旧・東京糸井重里事務所)などを経て現在はスタートアップ、エール(東京・品川)の取締役に就いている篠田真貴子氏が登壇。働き方など日本のレガシーをどう変えていくかを議論します。

 3つ目のセッションでは、著名なエコノミストと米中の政治・経済専門家が登壇。日本銀行の審議委員を務めた野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏、米国経済に詳しいみずほ総合研究所欧米調査部長の安井明彦氏、中国経済に詳しい東京財団政策研究所主席研究員の柯隆(か・りゅう)氏が、世界経済の回復時期や米中対立の行方について読み解きます。ぜひ、ご参加ください。

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■開催概要
日経ビジネスLIVE
「ニューノーマル時代の成長戦略~新たな長期的価値の創造~」

日時:2020年7月2日(木)~~8月中、全7回開催(予定)
会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
主催:日経ビジネス
Platinum Partner:EY Japan、Gold Partner:ServiceNow Japan
受講料:無料 ※事前登録制(先着順)

■プログラム Day2=7月9日(木) 「革新とレガシー」

15:35-15:40 オープニング

15:40-16:30 もの作りが変わる~コロナが加速する経営のデジタル化
森雅彦氏 DMG森精機 代表取締役社長
入山章栄氏 早稲田大学大学院経営管理研究科 教授

16:40-17:30 ニューノーマルで考える日本の「レガシー」
出口治明氏 立命館アジア太平洋大学(APU) 学長
篠田真貴子氏 エール取締役

17:40-18:30 経済回復はいつになるのか? 米中・新冷戦の影響を読む
木内登英氏 野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト
安井明彦氏 みずほ総合研究所 欧米調査部長
柯隆氏 東京財団政策研究所 主席研究員

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