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 読者の皆さんとコロナ後のキャリアや組織を考えていくシリーズ「世界の事例で考えるコロナ後のキャリアと組織」。前回の記事「[議論]みんなの課題、優秀な経営人材の作り方とは?」では、リモートワークが広がる中でいかにして「経営人材」を育てるかについて、皆さんからのご意見を募集しました。

 今回は皆さんから頂いたコメントを踏まえ、経営人材の育成法について解説していきます。講師は前回に引き続き、組織・人事に関する大手コンサルティングファーム、コーン・フェリー・ジャパンの増田智史クライアント・パートナーです。

(写真:PIXTA)

北西厚一(日経ビジネス編集)前回は増田さんから、「日本ではなぜ経営人材が育ちにくいのか」という問題について、原因を考察し議論のテーマを設定してもらいました。縦割り組織の弊害で社員に幅広い経験を付与できず、将来必要な能力への共通認識も持てず、経営者は日本人の男性であるべきだという考えに固執している――。もっともな指摘で、痛いところを突かれている、と思った読者も多かったのではないでしょうか。

 新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークの環境が定着し、社員の育成がないがしろになりかねない状況です。そんな今だからこそ、「経営人材の育て方」と真剣に向き合った方がいいのかもしれません。いつの時代でも、どこの場所でも共通しているのは、「ピンチはチャンス」に変えられるということです。

 それでは、増田さんに経営人材を育成するノウハウを解説していただきましょう。

増田智史(ますだ・ともふみ)氏
オーストラリア・ボンド大学大学院グローバルリーダーシップMBA修了。大手飲料メーカー、米系非営利人事コンサルティング会社を経て、2012年コーン・フェリー入社。グローバル企業におけるサクセッションマネジメント戦略の立案・導入に豊富な実績を持つ。アセスメント&サクセッション領域のプラクティス・リード。

増田智史(コーン・フェリー・ジャパン、クライアント・パートナー):皆さん、貴重なご意見を頂きましてありがとうございました。異見偏見さん、kuro603729さんからご指摘いただいたことは、一人ひとりの自覚と自律を引き出すことですね。kuro603729さんが掲げる「組織の明確を目的にする」「情報を広く共有する」「自分で判断して実行できる権限と責任を与える」という条件は、人を育てる上で必須の環境だと考えます。

 今回の解説編では、コーン・フェリーが複数の調査結果を分析して取りまとめた、経営人材を育成するための『型』を紹介したいと思います。

 まず、下の表をご覧ください。

『経営人材育成3.0』 ~日本企業における経営人材育成アプローチの推移~
出所:コーン・フェリー・ジャパン

 これは、経営人材の育成アプローチをいち早く変革して業績アップにつなげたグローバル企業の取り組みをベースに、日本の事例を重ねて体系化したものです。経営人材育成の工程表の「日本バージョン」です。時間の流れとしては、左から右。人材育成の過程が上から下と考えてください。

 時間の流れでは、まず、定期ローテーションで頭角を現した高成績者を経営者とする「ステージ1.0」があり、その次に、選抜した中間管理職をリーダーシップ研修などで育成する「ステージ2.0」がありました。そして、早期に特定したハイ・ポテンシャル人材一人ひとりに経験を積ませる「ステージ3.0」があります。現在は「2.0」から「3.0」への移行期にあると考えられますが、皆さんの組織はどのステージにありますか。

 次に、縦方向です。2020年7月に当社が日本の企業を対象に実施した実態調査では、「人材の要件定義」→「発掘」→「評価」→「育成」と進む4つの領域のうち、最も取り組みが進んでいるのが「育成」で、最も遅れているのが「人材の要件定義」という結果でした。

 集合研修とローテーションを中心に育成の機会はある程度提供しているのですが、将来からのバックキャスト(逆算)による戦略的な人材育成の起点となる「人材要件」への取り組みは遅れているようです。

 それぞれの領域における、キーポイントを解説します。