ケース1:ライバルとも手を結ぶ

 世界中で移動が制限され、在宅勤務が進んだことで、「孤立」が課題として取り上げられています。しかし、リーダーたちはこの機を生かし、より深くより広く周囲とつながり、存在感を高めようとしています。

 顕著な動きを見せているのがライフサイエンス業界です。ワクチン大手のフランス・サノフィと英グラクソ・スミスクラインは共同で新型コロナのワクチン開発を進めています。武田薬品工業も米CSLベーリングなど5社と共同で治療薬を開発し、いち早い実用化を目指しています。

 「COVID-19」という共通の敵は手ごわく、時間的な猶予も限られます。患者の命を助ける、生活の質を上げるといった本来の会社の目的を果たすには、新たな枠組みが欠かせません。製薬会社にとって開発は企業の生命線で、これまでこのレベルでの協力はあり得ないことでした。ただ、今必要なのは目の前にあるニューノーマルへの対応です。

 これまでとは違う水準での連携という壮大な社会実験をすることで、自分たちの可能性を広げているとも言えます。テクノロジー業界でも、ライバルである米国のアップルとグーグルが、濃厚接触したかどうかを判定する仕組みを共同開発する計画を発表しています。

ケース2:自らの組織を改善する

 優れたリーダーたちは、コロナ危機でできた時間的な余裕を生かし、組織固めにも手を打っています。運輸業界のあるグローバル企業のトップは、テクノロジーを活用した変革を加速させています。自動発送や、ドライバーや車両のモニタリング、GPS(全地球測位システム)といったテクノロジーを駆使することで、ドライバーらエッセンシャルワーカーが業務を継続し、顧客サービスを維持・向上できるようにしているだけではなく、それ以外の社員についても在宅勤務を導入するなど働き方を見直しています。彼は 「最優先は社員の安全、2番目はユニークな価値の提供、3番目は学びを次につなげることだ」と、コロナ以前から社員に伝え続けてきましたが、コロナを機に実際の行動で示すことで従業員の理解を深めようと考えています。

 アフターコロナを見据え、今後求められる組織能力の開発に取り組んでいる企業もあります。例えば中国の化粧品会社Lin Qingxuan。書き入れ時である春節の売上高が前年比90%減となりましたが、ビューティーアドバイザーの一部をオンラインのインフルエンサーに配置換えしたことでその後、急回復を果たしました。ライブストリーミング動画での商品紹介やSNSの活用によって、顧客に個別ソリューションを提供したことが功を奏したのです。従業員のリスキリング(再教育)やビジネスモデル変革の好事例と言えるでしょう。

ケース3:ユーモアで結束力を高める

 コロナショック後の数カ月で何千億円もの売り上げダウンに直面しているある企業の女性CEO(最高経営責任者)は、オンラインでの経営会議のたびに、背後にあえてユーモラスなものを置いています。先日は彼女の後ろで、三角帽をかぶった大きな妖精のぬいぐるみが敬礼していました。そして、何事もなかったかのように淡々と会議をスタートするのです。

 経営会議の他のメンバーは、次は何がくるのかと楽しみにしているそうです。業績が落ちている中での経営会議は、重苦しい空気が流れるものです。厳しい現実の中でもユーモアを忘れないことはメンバーの平常心を取り戻すことにつながり、積極的な議論のみならず、チームの結束力を高める要素となります。

 コロナ危機下においても、ポストコロナにおいても、社員が自信を持って自らの役割に向き合い、俊敏にビジネスを推進できるのが「強い組織」でしょう。そして、社員を率いるのがリーダーの務めです。

 ケース1は、ライバルとも手を組むといった平時にはなかなかできない戦略です。ケース2では組織を固めつつ、新たな時代に対応するため自己の能力アップに乗り出しています。そしてちゃめっ気のあるリーダーが登場したケース3は、ユーモアによって結束を高め、組織強化につなげる動きです。いずれも、ピンチをチャンスと捉え、リーダーが誰よりも前向きに行動している例だとお気づきになったかもしれません。

 皆さんはこのコロナショック下で、リーダーがどのように組織を率いるべきだと思いますか。会社の経営層が発信しているメッセージや報道されている企業の動きなどから、逆境における組織運営の心得を考えてみましょう。ご意見をコメント欄に投稿してください。次回、皆さんのコメントを踏まえて解説します。

【コメント投稿の方法】

議論のテーマ、「新型コロナで事業環境も働き方も激変しました。組織のリーダーはどのように行動すべきでしょうか?」について、ご意見をお寄せください。コロナ禍の中で、勤め先の会社の経営陣や上司、もしくは、あなた自身が部下に対して発信しているメッセージや、心がけている行動になどについて、教えてください。

次回の記事で、皆さんからのコメントをふまえて、滝波氏がコロナ後の世界で求められるリーダーの資質について解説します。見逃さないために、ぜひシリーズをフォローしてください。

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新型コロナウイルス対策で在宅勤務が広がっています。それに伴い、従来の日本型の雇用モデルを改め、海外で主流の「ジョブ型」雇用へ移行する動きが活発になっています。雇用の在り方に関する議論も実施しています。ぜひ、ご参加ください。

>>[議論]在宅勤務浸透で広がる「ジョブ型」雇用、賛成/反対?

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