何でも言い合える環境も難しそうです。

星野氏:私は社内の議論で遠慮しないし、社員と論理的に闘って負けるとは思っていない。それでも中には強く反論してくる社員もいて、私のほうが情報量が少ないときには、負けることがある。実は現場でこんなことが起こっているとか、顧客からこんな声が届いているとか、私の知らないことを彼らは知っている。そう気づくと、私が意見を変える。私は社員とそんな関係にある。

 大切なのは、社員のモチベーション。なぜなら、実行するのは、私でなく社員である以上、社員自身が納得していなければ正しいことも正しく実行できない。失敗したときも自分で気づいて、修正して、改善する。そうやって正解にたどり着くほうが社員のモチベーションは高い。

大浴場の混雑状況を顧客が分かるアプリも開発

フラットな組織は、コロナ禍でも生かされましたか。

星野氏:コロナ禍を乗り越えるための18カ月の計画を社員に説明したが、フラットな組織で社員一人ひとりが考えるためそこからの動きが早かった。それぞれの宿泊施設に合った「3密回避」の方法を早急に考えてくれたほか、大浴場の混雑状況を顧客が分かるアプリも開発。早くから3密回避をして、安心して宿泊してもらえる体制を取ったので、第1波が落ち着いた後の需要を早く捉えることができた。社員の素早い対応が、7~8月の回復につながった。

フラットな組織がスタッフのモチベーションにつながる
フラットな組織がスタッフのモチベーションにつながる

 近距離で旅行する「マイクロツーリズム」に焦点を当てたプランの場合、取り組んだ1つはサービスの変更だ。地元客にその土地の料理を出しても「知っている」と言われるから、同じ地元の食材でも普段と違った料理を提供したりするようにした。もう1つは販売方法だ。遠方に旅行する際は旅行サイトがよく使われたが、近場での旅行の場合、直接予約が増えると思ったため、地元の新聞やタウン誌などに力を入れた。

 コロナ禍で経営者として目指すのは社員や家族の生活を守ること。その実現のために100%力を尽くそうとしているし、コロナ禍ではフラットな組織の力が発揮された。フラットな組織はこれからも星野リゾートにとって会社を成長に導く大きな力になるだろう。

<span class="fontBold">「日経ビジネスLIVE」とは:</span>「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
「日経ビジネスLIVE」とは:「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 星野リゾート代表の星野佳路氏と森トラスト社長の伊達美和子氏が対談するWebセミナー(ウェビナー)を11月30日(月)14:30に開催します。「観光立国復活へのシナリオ」をテーマに、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた観光業界の厳しい現状と、観光客を再び呼び戻し、観光立国へと復活するために、どのようなシナリオを描くべきかなどについて議論します。日経ビジネス電子版の有料会員は受講料無料ですので、ぜひご参加ください。有料会員でない方は、まず会員登録をした上で、参加をお申し込みください。

 本ウェビナーは、日本を代表する大手企業トップ、著名有識者がライブで自らの考えを披露し、視聴者の質問にも答えるイベント「日経ビジネスLIVE あの経営者が語る 人づくりとコロナからの再興」のDay2として開催します(Day1は11月16日開催)。

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■開催概要
日経ビジネスLIVE
「あの経営者が語る 人づくりとコロナからの再興」

日時:2020年11月16日(月)、11月30日(月) 全4セッション(予定)
会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
主催:日経ビジネス
受講料:日経ビジネス電子版の有料会員は無料(事前登録制、先着順)
※有料会員でない方は、まず会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)。

■プログラム Day2=11月30日(月)「2021年 ニッポン再興へ」

14:30-15:30 観光立国復活へのシナリオ
星野佳路氏 星野リゾート代表
伊達美和子氏 森トラスト社長

15:40-16:40 「経済復興に何が必要か」(仮)
藻谷浩介氏 日本総合研究所 主席研究員
峰宗太郎氏 ウイルス免疫学研究者
石角友愛氏 パロアルトインサイトCEO

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この記事はシリーズ「星野リゾートの方程式2020」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。