一時、厳しさの目立った北海道や沖縄はどうでしょうか。

星野氏:北海道は夏から秋にかけてはかなり厳しかったが、ただ黙っていたわけではない。トマム(北海道占冠村)は札幌からのマイクロツーリズムのためにOMO7旭川(北海道旭川市)と組んでいろいろなツアーを企画したし、秋の需要は相当戻っている。ただしトマムの場合は夏や秋は昨年もインバウンドが少なく国内客が中心だった。一方、冬はスキー目的の宿泊客が中心で7割がインバウンドだった。ここまではマイクロツーリズムを中心にある程度集客が戻っているが冬はまったく違った課題があり、これをどう解決するかに懸命に取り組んでいる。

 沖縄はコロナ禍の第2波が来て8月にキャンセルが増え、需要が落ちた。ところが感染が収束して沖縄独自の緊急事態宣言が終了。玉城デニー知事がウエルカムメッセージをユーチューブに上げ、そして東京がGo Toトラベルに参加したことによって、かなり需要が戻っている。沖縄も他の場所と同じで都市部の那覇はまだ厳しいが、ビーチリゾートは予約が増えている。星のや沖縄(沖縄県読谷村)もいい状態で、コロナ禍前に予定していたペースになってきた。星のや竹富島(沖縄県竹富町)も好調だ。これはもちろんGo Toトラベルが効いている。リゾナーレ小浜島(同町)と西表島ホテル(同町)は再生に着手して間もないためまだデータが十分にないが、予約は入ってきている。

予約数、キャンセル数と感染者数の関係に変化

観光の戻り度合いは予想通りでしょうか。

星野氏:波があり、感染の第2波が落ち着いてきたのに伴い予約状況は好転してきている。

 一方、予約数、キャンセル数と感染者数の関係は、少し前まで感染者数が増えると予約数が下がり、感染者数が減ると予約数が上がる状態になっていた。それが最近ではそうしたことがなくなってきている。これはこのレベルの感染者数に対して、旅行者が不安を感じづらくなってきている。マスクをして距離を取るなどの対策が定着してきている。今後感染者数が爆発的に増えれば第3波となるため状況は変わるだろうが、現在の感染者数のレベルで推移しているときには予約数は影響を受けにくくなってきている。

Go Toトラベルは本来の2月以降の需要を前倒ししているだけではないかと危惧する声があります。

星野氏:例えば、温泉旅館である界の施設には早くも1月末まですべて満室になっているところがいくつかある。これは要するにGo Toトラベルが終わるのが1月末なので、それまでの予約が埋まった面もあるだろう。

 7月下旬からGo Toトラベルが始まり、10月の途中くらいまでは春に旅行に行けなかった人が「ようやく行けるようになったから行こう」と出かけていたと思うが、10月の後半から11~1月は「Go Toトラベル期間中だから行かなければ」という予約が一気に入っている。これは来年の2~4月の旅行需要を前倒ししている可能性が相当高いと私はみている。

 Go Toトラベルが終わったとき、宿泊代が35%引きだったのが元に戻るのではない。65%の宿泊代が100%になるわけだから、5割近く増しになると捉えるべきだ。このために2月以降の需要を先取りしている面もあり、相当に構えている。

星野氏は閑散日の需要を伸ばす上で、テレワークにポテンシャルを感じているという。(写真=栗原克己)
星野氏は閑散日の需要を伸ばす上で、テレワークにポテンシャルを感じているという。(写真=栗原克己)

 大切なのは魅力の開発で、Go Toトラベル期間後に本来の形に戻るようにするにはどうしたらいいかを考えている。ここに新しい魅力を提案できるようにと各施設に言っている。

 もう1つ、私の考えではGo Toトラベルが1月で終わった場合も、来年の4月のゴールデンウイークになれば、Go Toトラベルをもうひきずることなく、また新しい感覚になると思う。「Go Toトラベルで1月までに旅行したから、ゴールデンウイークは家にいよう」という人はあまりいないはずだ。ではその間の2、3月をどうするかだが、星野リゾートは半分くらいの施設が14日ほど休館する予定だ。Go Toトラベルが始まってから需要が高く推移しているので、この期間にはスタッフに有給休暇やリフレッシュ休暇を利用して休んでもらう。そこで何とかしのいでゴールデンウイークから再びしっかり需要を獲得していくための魅力をつくっていこうという発想だ。

 今一番力を入れているのはテレワーク滞在を充実させることだ。「テレワーク環境をしっかり用意しよう」「連泊プランを準備しよう」といったことに取り組んでいる。OMO7旭川に60日滞在した人もいるし、これまでもいろいろな施設で人数は少ないが、テレワーク滞在が出てきている。これを伸ばすために魅力を今仕込んでいる。例えば、リゾナーレ八ヶ岳(山梨県北杜市)では、アルツ磐梯(福島県磐梯町)からスキーリフトのゴンドラを運び3つ並べて、ここを個室にしている。個室だからリモートでの会議に参加しやすいし、デスクもあり、Wi-Fi環境も整っている。

 テレワークにポテンシャルを感じている理由は、閑散日に起こる需要だからだ。例えば温泉旅館の場合、平日は少し稼働率が落ち、土日が高くなる。テレワークをするには会社の仕事日でないとテレワークができない。今まで少し需要が足りなかったところにテレワーク需要が乗ってくる。インバウンドがいなくなったのを埋める部分もあるが、アフターコロナにとってはインバウンドが戻った後も大事な需要だと思っている。閑散日だけについて言えば、需要全体の10%ほどになってほしいと期待している。

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