今回のテーマとなった星野リゾートのBEB5 軽井沢
今回のテーマとなった星野リゾートのBEB5 軽井沢

会社が顧客と交わした約束をパートナーである社員が果たす

 先ほど述べたように、ブランドとは「会社の顧客に対する約束」を意味する。つまり、社員からすれば、自分の人生のパートナーである会社が顧客に交わした約束となる。ここで、「パートナーとはいえ、会社が勝手に交わした約束だから自分には関係ない」ではなく、「自分もパートナーとして会社が交わした約束を一緒に果たしていこう」と考えられるような擬人化を、社員全員に行ってもらえるようになるべきだ、というのがこの論文のエッセンスだと私は思う。

 新しい論文でもあり、そのために具体的にどうすべきかという手法などは今後研究されていくだろう。私は「上司、社長、先輩、そして自分の行動を通して、どのように会社を見るようになるのか」がカギになると考えている。例えば、先輩社員が顧客のことを本気で考えて働いていることを知ったときに、先輩社員の姿を通して「本気で顧客のことを考える会社だ」と捉える。もしくは、自分の利益や利害のことばかり考えている同僚が昇格したという事実を見て、「利己的な会社だ」と捉える、などが挙げられるだろう。「利己的」と擬人化された会社が交わした約束を、一緒になって果たしたいと思う社員は少ない。このような小さな事実と経験の積み重ねが、会社の擬人化の方向性を大きく決めていくと考えられる。

 イベントで語り合った星野リゾートのスタッフからは、会社が顧客と交わした約束をパートナーとして果たそうとしているのが強く伝わってきた。ファンダメンタルにおいて、会社と働いている人が結ばれているのではないか。だからこそ、顧客は無意識の一瞬の間に「この会社だ」と選んでいるのだと思う。

この記事はシリーズ「星野リゾートの方程式2020」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。