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 Raise LIVEとして2月の金曜日に実施のイベント「学生・若手に!『星野リゾートの教科書』現場・実践編」。最終回となる4回目のテーマは「居酒屋以上旅未満 マーケの法則とBEB」。米国の経営学者、アル・ライズ氏らの著書『売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則』を切り口にしながら、星野リゾートが長野県軽井沢町で運営する宿泊施設、BEB5軽井沢の取り組みを検証した。

イベント「居酒屋以上旅未満 マーケの法則とBEB」の様子

 BEB5軽井沢は2019年に開業した星野リゾートの最も新しいブランド「BEB」の1つ。若者らが対象の新しいタイプのホテルとして注目を集めていいる。このイベントシリーズにおいて、各施設の取り組みを経営学的な視点から解説してきた武蔵野大学の宍戸拓人准教授に現場の取り組みと教科書との関係を中心に聞いた。

今回の『売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケティング22の法則』はどんな教科書でしょうか。

宍戸准教授(以下宍戸):マーケティングにまつわる22の法則を扱っている。その内容は多岐にわたるが、ぜひ知ってほしいのは、同書はベースとしてマーケティングを「市場を押さえる」ではなく、「顧客の心を押さえる」あるいは「顧客の心に焼きつける」と捉えている点だ。

 マーケティングでは「市場」「セグメント」といったコンセプトを扱うが、忘れてはならないのは、市場とは一人ひとりの人間が構成していること。本書は、それぞれの人がそれぞれの心で「製品やサービスを選んでいる」以上、心をきちんと考えようという基本姿勢に基づいている。つまり、人の心が持つ法則や特徴を押さえればマーケティングがうまくいく一方、ここをおろそかにしていると一時的に売り上げが上がってもやがて落ちてしまう。

 近年の行動経済学では「人の心や頭はどうできているのか」を「直感的に情報を処理するシステム1」と「意識的に情報を処理するシステム2」に分かれている、とする。例を挙げれば、靴ひもを結ぶときにどう結んでいるかはあまり意識していないが、これはシステム1が駆動しているからだ。でもそのときに少し失敗して「結び方を間違えた。どうしよう」となると、システム2が駆動する。通常、多くの物事はシステム1によって意識せずに行われているが、システム1が処理できなくなるとシステム2が働く。