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旬の「あの人」と対話ができる。参加者同士でつながれる──。日経ビジネスは、記事やイベント、動画を組み合わせた新しいコンテンツ「Raise LIVE」をお届けします。あなたも、このコミュニティーの一員になりませんか。

金曜日は副編集長の中沢康彦が「星野リゾートの方程式2020」と題した連載と、イベント「学生・若手に!『星野リゾートの教科書』現場・実践編」を担当します。イベントでは「星野リゾートの教科書」「星野リゾートの事件簿」の著者でもある中沢が星野リゾートの担当者に現場の取り組みについて「公開取材」します。

日経ビジネス1月20日号では、ケーススタディー「星野リゾート、成長持続に欠かせない『脱カリスマ』」を掲載しています。合わせてお読みください。

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 長野・軽井沢発祥のリゾート運営会社、星野リゾートの成長ペースが加速している。国内だけでなく海外でのプロジェクトも増加傾向にある。成長のメカニズムやそれを支える仕組みをシリーズで解明していく。

 今回は従来の閑散期をブレークスルーする取り組みを通じて、蓄積してきた再生の方程式の一端を考察する。

奥入瀬渓流ホテルは冬場の営業を再開して3年目(写真=尾苗 清)

冬の風景が一変、あふれる宿泊客

 訪れる人が少なかった奥入瀬渓流の冬が変わりつつある。

 12月のある日。雪が降りしきる中、奥入瀬渓流ホテル(青森県十和田市)のロビーは、大型バスなどでやってくる宿泊客であふれていた。最近は個人客が増えており、インバウンド(訪日客)も通年で3割ほどいる。

 奥入瀬渓流ホテルは渓流のそばに立つ唯一の宿泊施設であり、客室数は187ある。星野リゾートは前体制が経営破綻した後、2005年から運営を手掛けている。

 冬場に訪れる宿泊客の大半は滞在中、ホテルのバスに乗って渓流に出かけ雪と氷に覆われた景色を楽しむ。夜は地元の協力で投光車を使ったライティングの下、滝が凍った「氷瀑」などの幻想的な眺めを堪能する。

奥入瀬渓流ホテルで人気を集める夜の「氷瀑ライトアップツアー」(写真=尾苗 清)

 奥入瀬渓流の周辺は一般には紅葉の名所として知られ、奥入瀬渓流ホテルでもかつては秋の集客が突出して多かった。ほかの季節は営業面で差があり、特に冬場は閑散期となっていた。

 星野リゾートは奥入瀬渓流ホテルの運営を開始した05年から3年間、冬場も営業していた。しかし、客室稼働率は2〜3割ほどにとどまり赤字だったことから、代表の星野佳路氏は冬場に閉鎖を決断した。奥入瀬渓流ホテルでは3年ほど前まで12月〜4月中旬までの約4カ月、施設を休業。大半のスタッフはトマム(北海道占冠村)など、星野リゾートが運営する他の施設に移って働いた。

 冬場の休業は9シーズン続いた。冬の営業を再開したのは17年だった。再開後、かつての閑古鳥が鳴いていた状況は一変。奥入瀬渓流ホテルは冬場も多くの宿泊客が訪れる施設に生まれ変わった。冬場に活用できる客室数を基準にすると、稼働率は8割ほどまで上がった。

 なぜ、これほどの変化が生じたのか。一連の取り組みから、星野リゾートが約30年かけて培ってきた「成功の方程式」が浮かぶ。