開発部門では、新規・再生を合わせると国内外で常時、30ほどの開発プロジェクトが同時に動いているという。

 プロジェクトの案件がそのまますべて開業につながるわけではないが、関係者の話を総合すると、今後5年で施設数は現在の2倍の80カ所ほどまで増える可能性がある。同社が近い将来の運営を明らかにしているのは10カ所ほど。マーケティング上の理由から情報を公開していない案件が多いとみられる。

 特に注目されるのは18年にスタートした都市観光ホテル「OMO(おも)」の動向だ。

 星野リゾートは従来、リゾート地に旅館・ホテルを展開していたが、OMOは都市部に立地している。国内のホテル数はリゾート地よりも都市部のほうが多い。その分、OMOは成長のポテンシャルが大きい。現在、北海道旭川市と東京・大塚の2施設だが、今後大幅に増えそうだ。

 海外展開にも積極的な姿勢を示している。今後はニューヨークなどの米本土や中国などへの進出も構想しているとみられる。

プロジェクトマネージャーが一貫して案件を担当

 次いで具体的な開発の流れを見てみよう。

 旅館・ホテルは開発段階に応じて担当者が代わることが少なくない。これに対して、星野リゾートでは案件ごとに担当者がプロジェクトマネージャーとして計画の立ち上げから開業まで一貫して担当する。施設のコンセプトから実際の建物の完成までに携わっていて、担当者が果たす役割が大きい。

 開発する案件はゼロから立ち上げるケースと既存施設の運営を引き受けるケースがある。国内の場合、合わせると毎月60~70件ほどが新たに持ち込まれる。

 入ってきた案件の情報はインターネットなどを活用して分析する。これを踏まえて10件ほどについては資産査定を実施。同時に、施設の方向性、価格帯、稼働率なども踏まえた試算を早い段階からブランドのマーケティング担当者らも巻き込み具体的に行う。

 星野リゾートは運営チームの毎年のサービス改善が競争力を生むと捉えている。このため、実際に開発に着手するかどうかを決めるとき、集客に向け「開業後に独自の演出をしやすいか」なども重要な要素になる。こうした点ではこれまでの開発で蓄えてきたノウハウを生かしている。

 案件を絞り込んだ上で月1、2件ほど視察を実施。着手する案件を決定する。

 リゾートは都市部のマンションやオフィスに比べて案件ごとの違いが大きく、収益性の見極めが難しい面がある。星野リゾートも「最終的にはやってみなければ分からない面はやはりある」(開発の中尾武志取締役)。それだけに多数の案件から、成功確率の高い運営先を選ぶ「買い手市場」に立つ意義は大きい。

星野リゾートで開発を担当する取締役の中尾武志氏(写真=栗原克己)
星野リゾートで開発を担当する取締役の中尾武志氏(写真=栗原克己)

 案件の着手決定から開業までの期間は案件のタイプなどによって違う。さまざまな調整があり、おおむね3~5年かかる。施設の魅力を最大限にするために、開発担当者を中心に最後まで徹底的に議論するのが星野リゾートのやり方だ。

 ブランドごとのコンセプトは明確であり、「星野リゾートらしさ」は社内で意識の共有が進んでいるようだ。案件の所在地の特徴や歴史や文化を踏まえながら、フラットな議論を重ねていき、魅力ある施設づくりにつなげる。

 開発案件のうち、既存施設の運営に着手する場合は特にノウハウ化が進む。

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