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木曜日は副編集長の大竹剛が「何が組織を腐らせるのか」と題した連載とイベントを担当します。

■「何が組織を腐らせるのか」トークイベント
2/6 終身雇用は限界? 今何が起きているのか
2/13 才能を殺す組織、生かす組織
2/20 「プロティアン」で組織も個人も生産性アップ
2/27 イノベーションを生む組織の作り方

前回は、経営側から「終身雇用は限界」というメッセージが盛んに発信されている構造的な背景を「ラジアー理論」を軸に考察しました。連載第3回は、いわゆる日本型雇用が崩壊すると、どのような雇用のあり方に変わっていくのか、考えてみたいと思います。

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終身雇用に象徴される日本型雇用が崩壊すると、究極的には人事は社員一人ひとりの個別管理に移行していくかもしれない(写真:PIXTA)
終身雇用に象徴される日本型雇用が崩壊すると、究極的には人事は社員一人ひとりの個別管理に移行していくかもしれない(写真:PIXTA)

 前回の記事「終身雇用崩壊でシニア社員の賃金が狙われる構造的理由」にも、たくさんの方からコメントをいただいた。この場を借りて、お礼を申し上げたい。ありがとうございました。

 前回の記事へのコメントで、最も多くの「いいね」を集めたのは、Ishiura Yasuoさんのコメントだ。


Ishiura Yasuo
デザインSV
私は50才代ですが、20年以上前からマクドナルドのカウンターに60代が立つ時代が来ると言われていましたし、企業の年功序列も維持できないだろうとも言われていました。それはあくまでも社会構造の問題であって、今の20代の若い世代の中で、給料や雇用形態がフラットになったとき、50代のビジネスマンに勝る人材がどれだけいるかは別問題です。企業の中に50代がいなくなるのと、20代の給料が上る事は同義語ではないでしょう。あくまでも国際社会で勝てる組織を作る手段として人材を選択する必要が迫られていると言うこと。その視点では、今の若い世代の未来のほうが心配です。

 前回の記事では、日本型雇用を支えてきた1つの要素として、大企業を中心に取り入れられてきたとされる賃金モデルの概念図(ラジアー理論)を示しながら、「終身雇用は限界」というメッセージが経営側から盛んに発せられる構造的な背景を示した。

日本企業が「定年退職制度」を導入している合理的理由を説明しているとされる「ラジアー理論」。若い頃の賃金を生産性(会社への貢献度)より低く抑える一方、シニア層の賃金を生産性より高く設定することで、長期的に人材を囲い込む。ただし、シニア層への「過払い」の状況は長期間維持できないから、特定の年齢で強制的に退職させる。それが「定年退職」という制度にあたる。
日本企業が「定年退職制度」を導入している合理的理由を説明しているとされる「ラジアー理論」。若い頃の賃金を生産性(会社への貢献度)より低く抑える一方、シニア層の賃金を生産性より高く設定することで、長期的に人材を囲い込む。ただし、シニア層への「過払い」の状況は長期間維持できないから、特定の年齢で強制的に退職させる。それが「定年退職」という制度にあたる。

 Ishiuraさんの指摘は、「終身雇用は限界」という掛け声の下で賃金カーブが修正されて、シニア層への賃金の「過払い」の状況や、若年層への「未払い」の状況が解消されていったとしても、若いビジネスパーソンなら誰でもシニア層の生産性や賃金を上回るわけではないというものだ。企業が人材を評価する際に年齢を全く考慮しなくなる状況は、若者にとってチャンスではあるが厳しい世界の到来でもあり、つらいのは「働かないおじさん」だけではないという意見だろう。

 では、企業が「優秀」と評価する人材はどのように決まるのか。公正な評価の難しさや、「能力給」に完全に移行した際の課題を指摘する声にも、「いいね」が多く集まった。石田修治さんのコメントだ。


石田修治
定年退職
私は大学卒業後最初は純日本企業に就職し、2年後に米系企業に転職した。米系企業の手取りは、額面で見ていた以上に前の会社より多く、当初は『こんなにもらって良いのか?』という感じだった。
(中略)
全面的な能力給であれば、60歳過ぎてから能力が落ちれば、その分給料を下げればよいし、若くても能力が高ければ同期の誰よりも、あるいは先輩よりも多い給料をもらえば良い。問題は『能力』の評価方法だ。
一般職は課長が、課長は上司の次長か部長が評価する。その評価は部内の他の課とのバランス調整後、上長の承認を得て決定された。この評価は、基本的に能力評価なのだが、人間性が良いと評価は甘目になる。本当は感情を交えずに評価できれば良いが、間接部門など客観的な評価の難しい部門もある。ただし、「所属長による評価」で一発決定では客観性が担保できないので、上長や部門間調整も取り入れたほうが良い。
能力給に完全に移行した場合に、同じ世代での格差が問題になる、特に子持ち世帯では大問題だ。その観点では税制特に所得税で調整するのが良い。子ども手当は止めて、代わりに幼児も含めて扶養控除の対象とすべきだし、子供の多い親は一般的な所得なら子供の年齢構成によっては『所得税ゼロ』もあるだろう。そのくらい大胆に改革すべきだと思う。

 今回は、Ishiuraさんや石田さんが指摘するような、終身雇用や年功序列といった日本型雇用のモデルが崩壊した後の世界について、皆さんと一緒に考えてみたい。