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 東京大学子会社のベンチャーキャピタル(VC)、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC、東京・文京)は2020年5月28日、新たなファンド「オープンイノベーション推進ファンド(AOIファンド)」を発表した。有限責任パートナー(LP)として東京大学、三井住友銀行、三菱UFJ銀行が出資。今後、金融機関や事業会社から追加の出資を募り、来年度の本格的なファンド組成を目指すという。

 このAOIファンド、ほかのファンドにはあまり見られない特徴を持っている。それはカーブアウトと呼ばれる手法を用いた案件を重点投資先として想定している点だ。

 カーブアウトとは企業の経営戦略の一つで、中核ではない(ノンコア)事業部門の一部を企業から切り出してベンチャーとして独立させる手法。新たに設立された企業は、外部から人材や資金を投入して事業の成長加速を狙える。一方、カーブアウトを実施する企業にとっては新会社の株式の一部を持つことにより、カーブアウトした新会社が成長の後にIPO(新規株式公開)や他企業へのM&A(買収・統合)といったイグジット(出口戦略)を実行した際、財務的リターンを得られるという側面がある。

 同日発表されたAOIファンドの2つの投資先もカーブアウトだ。武田薬品工業からスピンオフした新規医薬品の研究開発を手掛けるファイメクス(神奈川県藤沢市)、ユニ・チャームからのスピンオフで、BCGデジタルベンチャーズと共同設立された中国市場向け育児動画メディアを運営するOnedot(東京・目黒)の2件となっている。

 カーブアウトは手間と時間がかかる。企業が持つ技術や知的財産、人材をどう新会社に切り出すかの意思決定に時間を要するためだ。東京IPCでも「年間で2件手掛けられれば」(東京大学協創プラットフォーム開発パートナー、投資・インキュベーション担当の水本尚宏氏)と出資できる件数に限りがあることを認めている。だが、それでもカーブアウトを手掛けようとするのは、東京IPCが官民ファンドであり、民業圧迫を避ける狙いがあるためだ。