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 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府は緊急事態宣言の延長を決めた。日本経済が停滞する中、業績悪化に苦しむ企業が増えている。個人向け家計簿サービスや企業向け会計サービスを手がけるマネーフォワードもコスト見直しや銀行借入拡大などで未曽有の事態への対応を急ぐ。新型コロナという見えない敵に対して、マネーフォワードの辻庸介社長CEO(最高経営責任者)は何を思うのか。話を聞いた。

マネーフォワードの辻庸介社長CEO(最高経営責任者)

新型コロナがまん延し、経済が停滞しているが。

辻庸介・マネーフォワードCEO(以下、辻氏):今回の新型コロナ感染拡大はあらゆる経営者に「命よりも大事なものはない」という当たり前のことを突きつけた。経営者であれば誰しもが会社を潰したくないと考えるが、それはあくまでも社員の命が守られていることが前提。多くの経営者が下す意思決定において、明確に優先順位が生まれている。

 一方、国レベルで見ると、日本は新型コロナ対策が欧米と比べて遅れているなどの批判も寄せられている。だが、これはやはり歴史的な背景があってのことだろう。もともと、日本は戦後、強烈なリーダーシップで物事が決まっていくことを防ぐ仕組みになった。独裁的にならないよう、緊急下でも議論を交わすという民主主義を貫いている。だが、環境が激変している現状に適用できないルールが数多く顕在化したのも確かだ。これらをどう作り直すのかを考える時を迎えている。

 政府は時限措置としてオンライン教育やオンライン診療を解禁した。新型コロナが登場する以前、いわゆる「ビフォーコロナ」と呼ばれる世界ではいずれも反対する人たちがいて、彼ら彼女らには反対する合理的な理由があった。賛成する人がいて、反対する人がいる。それは自然なことで、当然のことだ。

 だが、新型コロナが発生し、すべての前提が崩れた。すべてについて改めて考え、作り直していかなければならない。過去に賛成していた、反対していたといったポジションは責められるべきではない。理想論を掲げるわけでもなく、ポジションに固執することでもなく、皆で考え、今この時から取り組んでいかなければならない。

 何が課題で、どうすれば変えられるのか。多くの人が受け入れやすいものでなければ世の中は動き始めないし、そこまで考え抜く必要がある。そして、何より重要なのは「スピード」だ。新型コロナの脅威は連日報道されていることからも明白だ。遅ければ新型コロナにやられてしまう。

新型コロナによって経営に変化があったか。

辻氏:新型コロナの感染拡大が進み、社員には当然動揺が広がった。だが、いつの間にかデザイナーやエンジニアが集い、全国の自治体が実施している補助金や助成金などの情報検索サービス「新型コロナウイルス 支援情報まとめ」を数日で作り上げていた。在宅勤務に切り替えている中で、今、社員は「なぜ働いているのか」というシンプルな問いに向き合っている。テレワークは監視されているわけでもないし、寝転がっていてもバレるわけでもない。自分たちは社会の何の役に立っているのか。これによって突き動かされる内発的動機が会社を支えている。

 経済はつながっている。自社のことだけを考えていても社会が崩れれば一緒に崩れる。特に新型コロナは我々のメイン顧客である中小企業に甚大なダメージを与えている。こうした企業に向けて何ができるのかを考えて動くことが結果的に社会に役立てる企業となり、それこそが我々の存在価値となる。これを再認識した。

 4月14日には2020年11月期の第1四半期決算を発表したが、全員がテレワークの状態で実施した。恐らく日本では完全にテレワークで決算会見を迎える最初の企業だったと思う。このノウハウもすべて公開した。新型コロナがまん延しているこの状況下で、マクロとミクロの双方から社会を見つめ、動く必要がある。我々にできることはミクロの領域しかない。目の前の企業を1社でも助けられるよう動きつつ、各業界がまとまって取り組みを進めていければと思う。