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 ダボス会議として知られる世界経済フォーラムが海洋のマイクロプラスチック問題の警鐘を鳴らしたのは2016年1月のこと。2050年までに重量換算で魚の量を超えるという予測を報告書としてまとめたことで、世界中の耳目を一気に集めた。

 マイクロプラスチックは一般的に直径5mm以下の小さな粒子を差す。これまで比較的大きなプラスチックが海洋生物に与える影響は問題視されていたが、微小なプラスチック粒子とそこに付着した有害物質が生態系に悪影響を及ぼす可能性があるとして、世界中で研究が進められている。

 このマイクロプラスチックが海洋に流出する原因は様々だ。角質や汚れを落とすための洗顔料やボディーソープに含まれるマイクロビーズなどはその一例。排水溝を流れて下水処理場で処理しきれなかった一部が海洋へ流れ出る。

 こうした中で、新たなマイクロプラスチックの発生源を突き止めたスタートアップがある。世界中からゴミをなくすことを目的に2011年に設立されたピリカだ。「フットサルやテニスコート、運動場などで使われている人工芝が海に流れ込んでいることを確認した」と語るのは代表取締役を務める小嶌不二夫氏だ。

ピリカによる海洋調査で集められた浮遊物

 ピリカは2018年夏に東京と大阪でマイクロプラスチックの調査を開始。河川や港湾におけるマイクロプラスチックの浮遊状況調査を進めたところ、緑のプラスチック片が多数見つかった。「調査を進めたところ人工芝の破片だった」と小嶌氏は語る。

浮遊物調査で多数見つかった人工芝の破片

 その後、ピリカは2019年に本格的な全国調査を開始。国内外の106カ所の人工芝を使用している施設で、グラウンドの周囲や水路に落ちている人工芝を目視で一つひとつカウントしていった。

 結果、見えてきたのは人工芝の用途によって流出可能性が大きく異なるという事実だ。スポーツ施設で使われている人工芝はそれ以外の用途で使われている施設と比べ、流出可能性が極めて高くなるという結果を確認したという。「施設側の水路にフィルターを設けるなど、流出を止める対策を早期に進める必要がある」と小嶌氏は指摘する。

 環境問題に直結するだけに、行政側の施策にも影響を及ぼしそうだ。例えば、東京都渋谷区が定める「渋谷区環境基本計画2018」では、校庭の天然芝生化を推進することを定めているが、隣の目黒区では逆に校庭の人工芝生化を進めている。

 ピリカは2020年3月25日、「マイクロプラスチック等浮遊状況データベース」の最新版を公開した。「プラスチックが自然界に流出しないようにしたい」と語る小嶌氏。人工芝という新たなマイクロプラスチックの発生原因が見つかった今、新技術の開発や施設側の対策が求められている。