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 「GAFAと戦う方法はあるはずだ」

 自動運転技術ベンチャーであるティアフォーの創業者兼CTO(最高技術責任者)の加藤真平氏はこう語った。

 GAFAとはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの頭文字を取った造語。いわゆるグローバルで高いシェアを持つITの巨人たちだ。グーグルは検索サービス、アップルはパソコンやOS(基本ソフト)、フェイスブックはSNS、アマゾン・ドット・コムはEC(電子商取引)を軸にユーザー数を伸ばし、事業を多角化している。

 ティアフォーの加藤氏をお招きし、「自動運転社会で日本が発揮できる強みとは」をテーマに議論した2020年2月12日開催の「Raise LIVE」。筆者の興味は、自動車領域ではグローバルで存在感を示してきた日本企業が、来る自動運転社会においてもその影響力を守れるのかというこの一点だった。

ティアフォーの創業者兼CTO(最高技術責任者)の加藤真平氏(写真:ドリームムービー)

 GAFAは高い収益基盤を背景に、多額の資金を研究開発に投入。自動運転の領域では特にグーグルの攻勢が目立つ。「GAFAは技術力もさることながら、エコシステムの作り方がすごい」(ティアフォーの加藤氏)。それぞれが他社に負けないテクノロジーを持ちつつ、そのテクノロジー無しには生活ができないマーケットを創出している点がGAFAの強さだ。

 自動運転社会はこれから訪れるであろう未来の社会。こうした社会を構成する技術開発では当然、莫大な研究開発投資が必要になる。だが、GAFAと対抗しうるだけの研究開発費を割ける日本企業は、残念ながらもはやほとんど残っていない。

 こうした中で、なぜか2015年創業のティアフォーが開発している自動運転ソフト「Autoware」はグローバルで存在感を増している。東京オリンピック・パラリンピックの選手村で走る自動運転バス「e-Palette(イーパレット)」の開発でも、トヨタ自動車と協業している。

 ティアフォーの採った戦略はIT業界の歴史から学んだものだった。

自動運転技術でも通用する「伽藍とバザール」

 マイクロソフトがOS市場での高いシェアを背景に様々な領域に触手を伸ばしていた20世紀末、社内資料が流出する事件が起きた。一般的に「ハロウィーン文書」と呼ばれるこれらの資料には、マイクロソフトの地位を今後脅かす存在になるかもしれないOS「Linux(リナックス)」に対する冷静な分析と企業戦略が記されていた。

 このハロウィーン文書を世間に発表したエリック・レイモンド氏が1999年に出版した書籍が「伽藍とバザール(The Cathedral and the Bazaar)」だ。これはソフトウエアの開発モデルについて触れられているエッセイであり、限られた環境下でのみ開発されるソフトウエア(Windows)と不特定多数が開発に参加するソフトウエア(Linux)という2つの開発方式の違いについて解説している。

 ティアフォーがGAFAと対峙するために採った戦略、それがまさにバザール方式だ。自動運転ソフトの業界標準を目指す非営利団体「The Autoware Foundation」を2018年に設立。自動運転を実現する様々なソフトウエアを公開し、世界中からアクセスできるようにしている。

 「自動運転領域で出遅れた日本企業が、何かしらの一つの技術で勝てるとは思わない。だが、グローバルアライアンスを作ることに対しては日本は長けている」(ティアフォーの加藤氏)。自社開発の自動運転技術を囲い込むグーグルに対し、オープン戦略で立ち向かおうとしているティアフォー。20世紀から21世紀にかけて繰り広げられたマイクロソフト対オープンソース陣営の構図を自動運転技術開発の領域に持ち込んだ形だ。

 来る自動運転社会でも日本企業が一定の存在感を示し続けられるかどうかはまだ分からない。だが、GAFAの強さの根源を研究し、GAFAが実現していないことはなにかを冷静に見極めれば、まだ採るべき戦略は残されている。ティアフォーの挑戦から学べることは多い。