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旬の「あの人」と対話ができる。参加者同士でつながれる──。日経ビジネスは、記事やイベント、動画を組み合わせた新しいコンテンツ「Raise LIVE」をお届けします。あなたも、このコミュニティーの一員になりませんか。

水曜日は副編集長の原隆が「起業家は語る」と題した連載とイベントを担当します。

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 エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)は“伸びる”であろう企業を見極める眼を持っている。すべてがすべて成功に至るとは限らない世界の中で、世の中のトレンドの先を読み、培った経験と蓄積された知見からその確度を高める術(すべ)を持っていると、はた目にも思う。

 だが、記者はスタートアップ企業を見極める方法を持ち合わせていない。当然、ほとんどのスタートアップ企業がやる気に満ちあふれているし、キラキラと輝いて見える。毎年数多くのスタートアップ企業が生まれる中で、どの起業家を取り上げるべきか、どの起業家を取り上げるべきではないかという判断は実に難しい。

(写真:アフロ)

 特に、最近ではスタートアップ企業の多くが初期段階からPR(パブリックリレーションズ)に力を注ぐ。スタートアップ企業支援に特化したPR企業も増えており、より見極めが難しくなっている。

 今から7年前、ある社長の紹介で新進気鋭の起業家を紹介されたことがある。当時としては大型の資金調達に成功したばかりだった。紹介された場所が飲みの場だったということもあるが、自己紹介をして名刺を差し出すと、「名刺ないんで」とにべもない対応をされた。

 だが、こんなことは記者の仕事をしていれば別に珍しいことではない。そもそも飲みの場に記者なんていてほしくないと思うほうが普通だ。長居は迷惑をかけると察して、15分ほどでそそくさと場を離れた。

 問題はその後だ。至極丁寧に書かれたメールが届いた。「記事をいつも拝見しています」とまで書かれている。あまりにも違う態度に同じ人かと驚いてしまった。逆のケースもあった。最初にお会いしたときと企業が成長した後で、起業家の性格も態度もがらりと変わっているケースだ。

 あるとき、記者が起業家を見極めるには「変化」を見るしかないことに気づいた。起業家の環境はダイナミックに変わり続けるが、記者の環境にはたいした変化がない。企業の新規性や成長性よりも、起業家の「人」を見続けることこそが記者が持ちうる唯一の手段かもしれない、と。

 時折、上場した企業の社長から電話が鳴る。飲みながら、近況を聞く。株価がさえない、人材が採れない、事業が伸びないと暗い顔。しかし、こちらはただの記者なので何のアドバイスもできず、ただ相づちを打つしかない。できる話といえば、まだスタートアップ企業と呼ばれていた頃に取材した昔話くらい。それでも、社長は別れ際に「なぜ起業したのかを思い出した」と笑顔で去っていく。

 メディアがスタートアップ企業を取り上げるのは一定のリスクがある。何かが起きたときの責任の一端をメディアも担っているし、どうしても慎重にならざるを得ない部分がある。

 だが、国を代表するような名だたる大企業だけを取り上げていればよいかというと、それも違う。新たなプレーヤーが次々と生まれてくるからこそ、国に活力がみなぎる。そして、何より取材を通してきらめく原石を見つけるのはとても楽しいものなのだ。

 記者ができることはたかが知れている。だが、過去のベンチャーバブル崩壊を何度か見てきた者として、新興企業が生まれるエコシステムが健全に回り続けるためにメディアは何ができるのかという視点は常に持ち続けていたいと思う。

「起業家は語る」トークイベント

2/5 起業家マインドの強みを生かす
ゲスト:マネーフォワード社長CEO 辻庸介氏

2/12 自動運転社会で日本が発揮できる強み
ゲスト:ティアフォー取締役会長兼最高技術責任者(CTO)加藤真平氏

2/19 「D2C」ブランドで実現する「理念経営」
モデラート代表取締役 市原明日香氏

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Raise LIVEのラインナップ


曜日 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
連載名 多様化する稼ぎ方、達人が明かす秘訣 「幸せ」な働き方は 起業家は語る 何が組織を腐らせるのか 星野リゾートの方程式2020
イベントの主なゲスト ストリートアカデミー代表取締役社長
藤本崇氏 など
『働き方の哲学』著者、
キャリア・ポートレート
 コンサルティング
村山昇氏 など
マネーフォワード社長CEO
辻庸介氏 など
ワンキャリア取締役
北野唯我氏 など
武蔵野大准教授
宍戸拓人氏 など
担当者 島津 翔 定方 美緒 原 隆 大竹 剛 中沢康彦