にっちもさっちもいかなくなった

 では、自分がしたいことに仕事で取り組んでいくと、何を得られるのか。

 「(会社の)どの仕組みが作用しているのか明確には分からない」(団氏)としつつ、新入社員に目に見える変化が表れるのは3年ほどたった頃。仕事は自分で獲得していくものだという姿勢を身に付けて働けるようになると、「主体性が高く、積極的という評価をクライアントなどから得られるようになる。さらに、『うちに来ないか』とスカウトもされるようになる」のだという。同社では必須の「兼業」への道も開けるわけだ。

 団氏がアソブロックでの仕事を通じて重視するのは「成長しているという実感が持てているか」という観点だ。そのための近道が、「自分のやりたいことに精一杯取り組む」ことなのだとする。「兼業必須」というのも、「その方が個々の成長スピードが高いと思うから」だと説明する。

 アソブロックは今のような制度を創業時から採用していたわけではない。創業の2003年から3年ほどは、いわゆる「大企業を目指す一般的な企業」だったという。

 ただ、「社員があまり楽しそうでなかった」(団氏)と振り返る。売り上げが伸びても、「心の底から喜べない仕事が多かった気がする。社内が良い環境とはいえず、ミスも多かった。その結果、私たちの規模からすると比較的大きなミスが発生し、会社がにっちもさっちもいかなくなった。それが原因で、社員に転職してもらった経験がある」。

 こうした経験が、今のアソブロックの形につながっていった。

 残った社員にも満足に給料が払えなかったことを背景に、兼業を解禁。すると、「その人の満足度が目に見えて上がっていった。兼業は自分のできることが増えていくということ。兼業っていいなと気付いた」。

なぜ社員は独立しないのか?

 疑問が残る。社員一人ひとりがやりたいことを組織に縛られずに取り組むのなら、最初から独立して事業を始めれば良いのではないだろうか。アソブロックは資本金を出資するなど社員の起業も積極的に支援するし、勧めている。ただ、アソブロックで働くからこそ、得られるものがあるのか。

 団氏は「社員というメンバーである以上は会社に(売り上げの)一定額を入れなければいけないため、金銭的なことだけを考えるのであれば独立した方が良いかもしれない。アソブロックの中にいる方が成長できると思うメンバーが関わり続けるのだと思う」と語る。

 アソブロックでは年に2回、「みっちり話す」ための合宿を開く。そのほかの機会でも、オフィスに社員が上がってきたときに「壁打ち」として議論が交わされる。

 「アスリートは全く違う競技のアスリートと出会って刺激をもらう。同じように、自分ではやろうとも思わないような事業の話を聞けるのが会社の面白さ。新たな価値をもたらしてさらなる成長につながるのだと思う。社会保障などのバックアップも含め、一定の人には適した場所なのでないか」と語る。

 最後に、「創業当初のアソブロックと、それぞれがやりたいことに取り組む今のアソブロック。メンバーにどのような違いがあるのか」と尋ねた。

 団氏は「『私が』という自分を主体とするコミュニケーションが増えた。『こうすべきだ』という自分の気持ちで動けるようになった」と語る。

 さらにこう続けた。「自分にどれだけの選択肢があるのかが、豊かな幸せを感じるための条件だ」。兼業や自らが取り組む事業内容、それに伴う働き方を含め、自らが主体的に選択できる自分の周りの環境を作っていくことこそ、幸せな働き方ができるというわけだ。

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