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旬の「あの人」と対話ができる。参加者同士でつながれる──。2月、日経ビジネスは記事やイベント、動画を組み合わせた新しいコンテンツ「Raise LIVE」をお届けします。あなたも、このコミュニティーの一員になりませんか。

火曜日は記者の定方美緒が「『幸せ』な働き方は」と題した連載とイベントを担当します。どのような働き方が幸せなのか? そもそも、「働く」とはどういうことなのか? 日々の生活で多くの時間を費やす仕事とどう向き合うのかによって、人生が大きく変わる気がしています。

そして、今の日本は、組織の形も働き方も多様化しています。トップダウンのヒエラルキー型ではなくフラット型の組織が注目を集めたり、転職や副業も珍しくなくなってきたりして、従来の働き方だけではない新たな選択肢が増えています。イベントでは哲学的な視点や実践例を聞きながら、幸せを感じられる働き方のヒントを見つけていきたいと考えています。


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 「『幸せ』な働き方」を取材するうえで、気になっていたテーマがある。「働く」とは人々にとってどんな意味を持ってきたか、という問いである。その歴史的な変遷を見ながら、現在を考えたいと思ったからだ。

 「仕事」という言葉にも様々な意味合いがあることは自明だろう。例えば、「労役」と感じるような短時間の「作業」から、「使命」と感じ、「ライフワーク」として生涯をかけて臨むものまで、意味は広い。

(写真:アフロ)

「仕事の意味」、現代は多様化

 長い歴史を振り返ったとき、「働く」ことの意義はこれまでどんな変遷をたどってきたのか。『働き方の哲学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)著者で、キャリア・ポートレートコンサルティング(東京・調布)の村山昇氏は以下のように整理する。

区分 時期 労働観
古代ギリシャ ~5世紀ごろ 奴隷が行う苦役
古代・中世のキリスト教世界 5~14世紀ごろ 「神の罰」としての労働(聖書の一節では、アダムが神に背いて木の実を食べてしまったことから罰として労働が課せられている)
「労働には人間をよくする作用がある」として、祈りや瞑想(めいそう)とともに重要な行いの一つに
近世のキリスト教世界 15~17世紀 宗教改革を経て「与えられた仕事にできる限り励むことが宗教的使命」という流れが誕生
神の偉大さを証明するための仕事という意味で、「天職」という概念が生まれたのはこの頃
近代 18~19世紀 市民革命を経て、政治的平等や経済的自由を手にする時代に。職業倫理が宗教から切り離され、労働の意義が世俗化
仕事・事業は成功者になるための手段。「アメリカンドリーム」の時代が到来
産業革命による大量生産と資本主義が結び付き、多数の賃金労働者が誕生。単調に反復する労働には新たな否定的見方も
現代 20世紀~ 労働者の多くは、企業や官庁など組織に雇われるサラリーパーソンに。組織から言い渡される多少の無理難題を忍耐強くこなす会社員の勤勉さが社会を支える
自己実現や社会貢献の機会であってほしいと願う人たちの増加

 表から読み取れるように、労働とは奴隷による「苦役」として始まり、その後の古代・中世のキリスト教世界でも「罰」としての性格が色濃く残っていた。その後、意味が多様化し「社会貢献」や「自己実現」など肯定的な捉え方まで意味が幅広くなっている。働くことの意義が変化するきっかけとして、市民革命や産業革命などの転換点があった。

 では、「働く」ことの意味が幅広くなった現代、実際はどんな受け止め方をされているだろうか?

 日本生産性本部は1969年以降、新入社員を対象に、春の入社時期に意識調査を実施している。2019年度の「新入社員『働くこと』の意識調査」(回収数1792人)によると、「働く目的」で最も多い回答は「楽しい生活をしたい」で39.6%だった。過去最高である17年度の42.6%からは減少しているものの、01年度に急増して以来、働く目的としてトップが続いている。

 一方で減少を続けるのが、「自分の能力をためす」。1970年代には35%を超えてトップを走っていたにもかかわらず、右肩下がりを続ける。2019年度は10.5%まで低下した。

 「ポスト現代」について、村山氏は「多くはないだろうが、『楽しく仕事をする』を目的に趣味やゲームで食べていくという人も出てくるだろう」といった例を語る。今もまた、「働く」を巡る見方は揺れ動き、労働観は転換点にあるのかもしれない。