旬の「あの人」と対話ができる。参加者同士でつながれる──。2月、日経ビジネスは記事やイベント、動画を組み合わせた新しいコンテンツ「Raise LIVE」をお届けします。あなたも、このコミュニティーの一員になりませんか。

月曜日は記者の定方美緒が「『幸せ』な働き方は」と題した連載とイベントを担当します。

どのような働き方が幸せなのか? そもそも、「働く」とはどういうことなのか? 日々の生活で多くの時間を費やす仕事とどう向き合うのかによって、人生が大きく変わる気がしています。

そして、今の日本は、組織の形も働き方も多様化しています。トップダウンのヒエラルキー型ではなくフラット型の組織が注目を集めたり、転職や副業も珍しくなくなってきたりして、従来の働き方だけではない新たな選択肢が増えています。イベントでは哲学的な視点や実践例を聞きながら、幸せを感じられる働き方のヒントを見つけていきたいと考えています。

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 30代となった今、同年代の友人や知人と集まると、「転職を検討している」「転職した」という話を聞く機会も多い。キャリアや仕事内容、人間関係にどこか不満や不安を抱えながら仕事をしているとき、このまま今の仕事を続けるのか迷いが生まれるのだという。

 確かに、転職サービス「doda」を利用して転職した人の平均年齢は31.7歳。入社して経験を積み重ねつつある中、自分の人生を長い目で考えないといけないという気持ちになってくるのだと思う。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

幸せの定義の崩壊

 私自身、2019年10月28日号で掲載したスペシャルリポート「もう『階層』はいらない 自律組織が閉塞感を打破」の記事で取り上げた次世代の組織運営モデルといわれる「ティール組織」の取材は、働くことについて改めて考える機会になった。

 ヒエラルキー構造でなく、社員が自律的に動くティール組織では、「存在目的」が1つの大きなポイントになっている。組織の目指す方向を考え、自身の目指す方向と重なっているときにこそ、大きな力を発揮できる。社員のやりがいも生まれるのだ。

 一方、ティール的な組織を目指したものの断念した企業の中には、自律的な働き方を追求していると、「社員が倒れていった」のだと語る人もいた。これも想像できるような気がする。ゴールなく働くのであれば、精神的にも肉体的にも疲れてしまう。

 多くの一部上場企業で精神科産業医を務め、健康経営コンサルティング事業を展開するフェアワーク(東京・中央)の吉田健一社長は、会社員や患者と接する中で「誰にとっても分かりやすい成功モデルは無くなりつつある。『幸せ』の定義が変わっていくなかでとまどっている働く人が増えている」と感じるという。

 例えば、「住宅双六(すごろく)」。

 フリダシは新婚時代の小さなアパート、子供が生まれる頃に賃貸マンションに移り、やがて分譲マンションを手に入れて、それを売り払って庭付き一戸建てを手に入れたらアガリ。

 仕事を通じて役職が上がり、経済的に成功すればこのパターンに乗れた。しかし、未婚率が高まり、空き家問題まで顕在化。さらに、そもそも出世をしたくないと思う人も出ている中で、必ずしもこうした双六的住み替えが「成功」といえないのは明らかなように感じる。

 吉田社長は、「バブル期以前のように『頑張ったらなんとかなる』という時代は終わり、以前は考える必要性があまりなかった働く上での幸せについて、方向性を見失いがちになっている」と指摘する。

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