「専門領域の集積」ではなくて「稼ぎたい個人の集積」という景色
端羽氏:おっしゃるような手作業はずいぶん減ってきました。類似案件であればすぐにマッチングできますし、データベースを検索するエンジンにも磨きをかけてきました。まだ日程調整など細かい部分は自動化できていませんが、ゆくゆくは大部分をシステムに任せられるようになると思います。
ご指摘いただいた「人の手をかける」ということが、我々の強みにもなると考えています。担当者が間に入っていろいろな情報を付加していったことが、データベースの厚みを増しているからです。
今、国内外でアドバイザーが10万人います。このデータベースは、別の角度から「誰かと取引してもいいと考えている人の集積」と見ることもできます。
なるほど。端羽さんには「専門領域の集積」ではなくて「稼ぎたい個人の集積」という景色が見えている。
端羽氏:そうです。取引したい人だけが登録されているデータベースって他にはないと思うんです。それが、名刺管理サービスのデータベースとは全く違う点です。マネタイズも当然、しやすい。
このデータベースに、我々はいろいろな商材を乗せていこうと考えています。そもそも取引したい人たちなので、もしかしたらインタビューだけでなくプロジェクトも引き受けてくれるかもしれないし、別のサービスの担い手になるかもしれない。たくさんの活躍の場をつくっていきます。
私の気持ちとしては、今の10万人を50万人、100万人と増やして、いずれは働く人なら誰でも登録するようなサービスにしていきたいと考えています。
もう1つ、今、私が面白いと思っているのは、我々のマッチングの技術です。先ほども申し上げましたが、我々は企業と個人のマッチングに投資を続け、磨きこんできました。このシステムを、クライアントの内部だけで活用するサービスにできないかと思っているんです。「こういう知見を持っている社員が別の部署にいる」ということが分かるサービスです。大企業だとなかなかそういうデータベースや検索システムがない。
50万人、100万人のデータベースにどんな商材を乗せてマネタイズできるか、マッチング技術をどう転用していくか──。今、ワクワクしているんです。
このタイミングで上場する意図を教えてください。ベンチャーキャピタル (VC)からの要請ですか?
端羽氏:実はVCからは全くせかされていませんでした。完全に私たちが事業戦略上、上場したかったんです。
新しい働き方って、万人に受けるわけじゃない。それに、大企業の中にはベンチャーと契約することに対してハードルが高い企業もある。だから、幹事会社や監査法人、取引所などのいろんな観点で私たちを見てもらって、審査をきちんと通って、「社会の公器としてこのプラットフォームは上場できる」と言ってほしかったんです。
それは課題の裏返しでもあるのでは? 認知度をもっと高める必要を感じていますか?
端羽氏:認知度だけではありません。知っているけど登録しない方、知っているけど試してくれない企業がまだまだ多いんですよね。上場することで、そのハードルが低くなることを期待しています。
もちろん金銭的、戦略的な自由度は担保したいので、それも理由の1つですが、この数年、エクイティ調達してこなかった会社なので、調達が第一目的ではありません。