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 助言を求める企業と、「その道のプロ」である個人をマッチングするサービスを手がけるビザスクが、3月10日、東証マザーズに上場する。

 同社のクライアントは、主に新規事業や技術活用などに関して専門家からのアドバイスを得たい企業。その企業向けに、ビザスクに登録した知見豊富な個人(アドバイザー)を同社がマッチングする。売上高の8割を占めるのは、そのアドバイザーに1回1時間でヒアリングできる「ビザスクinterview」サービスだ。クライアント企業からプラットフォームの利用料金をもらい、マッチングしたアドバイザーに報酬を渡す仕組みを採る。

 一般的なスキルシェアサービスは、プラットフォーム上で個人が講座をアップし、興味を持った個人がその講座を自由に選ぶ。一方でビザスクは、同社の担当者が企業とアドバイザーの間に入り、システム上で依頼に最適なアドバイザーを抽出する。そのアドバイザーに担当者が追加のヒアリングをして、クライアントの要望にピンポイントで合う人材を紹介する。

 一見、労働集約型で手間がかかるマッチングサービスに映るが、ヒアリングを通じて収集した詳細な専門領域情報がミルフィーユのように積み重なったデータベースが、今後の同社最大の強みとなる。

 「個人が稼げるサービスをつくりたい」と思い、8年前に起業を決意した端羽英子社長。創業後、数年はもがいたが、この数年、業績は右上がりで順調に伸びる。2019年2月期には純利益で黒字転換を果たし、今期も増収増益を見込む。現在、国内外でアドバイザーは10万人、マッチング実績は累計4.7万件まで増えた。これらの実績によって蓄積されたデータベースは、「次なるサービス」への母体となるものだ。

 上場を目前に控え、今、彼女が見ている未来の景色とは──。

端羽英子氏
ビザスク代表取締役CEO
2001年に東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券投資銀行部で企業ファイナンスに携わるも妊娠出産のため1年で退職。米国公認会計士資格を取得し日本ロレアルで予算立案・管理を担当した後、マサチューセッツ工科大学に留学しMBAを取得。 PEファンドのユニゾン・キャピタルでエノテカの非公開化などバイアウト投資を5年間担当した後、2013年10月に「世界中の知見をつなぐ」をビジョンに掲げる、ビジネス知見に特化した日本最大級のスキルシェアプラットフォーム「ビザスク」を立ち上げる。

端羽さんには2016年に日経ビジネスの「次代を創る100人」で登場いただきました。その際、端羽さんの恩師である経済学者の伊藤元重さんがUberやAirbnbを引き合いに出して「シェアする資産としては人材やスキルのほうが重要なはずだ」とビザスクに期待を寄せました。ただ、今のビザスクは、UberやAirbnbのように、プラットフォーム上で自由に個人がマッチングするCtoCサービスではありませんね。もともと描いていた世界と違うのでは?

端羽英子・ビザスク代表取締役CEO(以下、端羽氏):私が遠くに見ているのは、人がもっともっと自由に知見をシェアできるような自由なマッチングです。

 ただし、自分の知見を上手に表現するのって難しいんですよね。例えば私は日本ロレアルに在籍していたので、化粧品に関してある程度の知見があります。でも企業が得たいのは「化粧品の知見」ではなくて、メイクアップなのかスキンケアなのか、高級品なのかそうでないのか、開発なのか生産なのか、といったより詳細な内容です。はじめから細かい粒度で、「私の知見はこうです」と言える人はほとんどいない。ざっくり「インターネットに詳しい」と書く人がいるくらいですから。

 それに、クルマを借りて移動したいとか、旅に行ってどこに泊まるか考えたいといった領域は、シェアする対象が有形ですよね。「クルマ」「部屋」といったモノがある。一方で私たちの領域は無形なんです。知見に形はないから。だから私たちが入って、そのおぼろげな状態に価値を付け加えていく必要がある。それを創業して間もないころに気づいたんです。

とは言え、人の手をかけるということは労働集約型になり、事業がスケールしにくくなりませんか?