次に西村さんに、「副業入門」という観点で伺います。まず何から始めればいいか教えていただけますか?

西村氏:書籍『複業の教科書』でも書いたのですが、「How」の前に「Why」が大事だと思っています。

 副業を始めたものの続かない人には共通点があって、それは目標が定まっていないこと。やっぱりビジョンなき副業はやるべきではないですね。

 副業を始めたい理由のトップは「副収入を得たいから」なんです。みんな、空いている時間で簡単に稼ぎたいと思っている。でも、副業ってそんなに甘いもんじゃないんですよね。時間に稼ぎが見合わない期間がある程度あって、それを超えると稼げるようになる。なので、甘い動機で始めると割に合わずに続かなくなる。

 私が副業を始めたのは、本業では得られないスキルを得たいという明確な目標がありました。事実、最初は月に50時間費やしても62円しか売り上げが上がらなかったんです。でも、目標が「お金」ではなかったので続けることができました。そのうちに、売り上げがついてくるようになりました。

 そのうえで、「How」を解説すると、まずは自分の棚卸しから始めたほうがいい。業務で培ってきた具体的なスキルや能力は何か? プライベートで興味があることや、趣味は何か? それをリスト化してほしいんです。その中から、市場のニーズがあるものを探して、小さな副業にしてみる。

目的やビジョンとはどんなものが挙げられますか?

西村氏:「ビジョン」と呼ぶほど大層なものじゃなくてもいいんです。先ほど動機の1位が「副収入を得たい」だと紹介しましたが、実際に副業してみた人に聞くと、本業では得られない「スキルや知識」を得られることが1位、「やりがい」が2位、「つながり」が3位、やっと4位に「お金」なんですね。

 これらの本業では得られないものを得るというものが、一定の目的になり得るのかな、と考えています。この4つの中にピンと来るものがあればそれを目的に置いて、それを達成するためにどんな副業をするのがいいか考えるのが近道だと思います。

西村さんから、始めるに当たって目的が重要だという話がありました。続いて森さんに伺います。「続けるための秘訣」とは。

森氏:「本業があって副業がある」ということを再認識することですね。僕が大事にしている考え方は、「何事も振り子である」ということ。一方が高いポジションを取れば、振り子のように振れることでもう一方も高いポジションまで重りが上がる。これが本業と副業の関係だと思います。この振り子を大きく振れるようにしていくことが大切だと思います。

西村さんは。

西村氏:私は「複業家に贈る5カ条」を紹介したいと思います。大切な順に並べているのですが、1つ目は「先義後利」。まず「義」がある。これは「Give first」の考え方に近いと思います。まず人の役に立てることから始める。利益は後からついてくるという考え方を大切にしています。

 2つ目は今まさに森さんが言ったことで、「本業専念」。本業あっての副業だということです。副業をやっていることで本業のパフォーマンスが下がるのはよくない。

 3つ目は「公明正大」。人に言えない副業はするな、ということです。4つ目が「自己管理」。自分の健康を害するまでやるのはよくない。そして最後が「他者配慮」。家族がいればプライベートの時間って一人のものではないですよね。誰かのサポートのうえで副業が成り立っていることを忘れてはいけない。そのうえで、上司や部下に対して副業で培ったことを還元するつもりでやってほしいと思います。

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