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 副業を始めるために必要なことは? それを続けるために大切な工夫は? 2月17日のRaise LIVEには、複業研究家の西村創一朗氏と、ショートカット研究家の森新氏が登壇した。副業をめぐる現状と課題を整理した後で、第一人者である西村氏は「複業家に贈る5カ条」を、実践者である森氏は「振り子」に例えた「副業に向かう考え方」を披露した。イベントの一部を紹介する。

2月17日のRaise LIVEに登壇した西村創一朗氏(右)と森新氏(中央)。モデレーターは記者の島津翔(左)(写真:ドリームムービー)


まずは西村さんに伺いたいのですが、副業・複業や兼業をめぐる現在の状況を教えてください。

西村 創一朗氏:私は3年前までリクルートキャリアで社員として働いていました。在職中の2013年に、副業を始めました。副業という働き方をもっと広めたいと思って、今の会社を立ち上げました。当時は複業禁止の企業が9割という状況でしたが、「二兎(にと)を追って二兎を得る世の中をつくる」というビジョンを掲げました。

西村 創一朗氏
株式会社HARES CEO 複業研究家 / HRマーケター NPO法人ファザーリングジャパン 理事
(写真:ドリームムービー)

 4年前、ロート製薬が副業を解禁したことを、多くのメディアがニュースとして取り上げました。それがきっかけで、経済産業省や厚生労働省が動き、副業解禁の検討が本格的に進んだ。自分も委員をやらせてもらいました。

 その結果として、2018年1月に「モデル就業規則」が改定されました。みなさん、就業規則はご存じですよね。会社の憲法のようなもので、その会社で働くなら守らなければならない規則です。この就業規則は、自社で独自につくると大変なので、厚労省がひな型をつくっています。それがモデル就業規則です。多くの会社がそれをベースにカスタマイズしながら自社の規則をつくっていますが、このモデル就業規則が作成されたのは半世紀近く前なんですね。当時は副業禁止が当たり前だったので、モデル就業規則でも副業が禁止されています。多くの企業は、それにならって明確な理由がない状態で副業を禁止していました。

 2018年の改定で、厚労省が「原則認めるべし」と転換しました。そのうえで、副業を解禁することに当たってのガイドラインを出したんです。

 そこから大手企業で解禁の検討が始まり、1年たって2019年に、みずほフィナンシャルグループや三菱地所など多くの企業が解禁し、自治体も続きました。私はこうした動きを受けて、2019年を「副業解禁ビッグバンの年」と呼んでいます。

 2019年5月の日経新聞の調査では、回答企業のうち49.6%が既に解禁していて、5.0%が検討中だった。検討している企業を含めると、半数を超えたんですね。ここまで来ると、「禁止されているから行動しなかった人」が本格的に検討し始めるでしょう。2020年は副業をする人が一気に増える年になると思っています。

西村さんは「副業解禁のワナ」という言葉を使っています。これだけ多くの企業が解禁しましたが、中にはうまくいっていない会社もある。

西村氏:そうですね。うまくいっていない会社はたくさんあります。まず、そもそも、なんで副業を解禁するのか、社員にどうしてほしいのか、というビジョンがない。それが1点目。次に、ビジョンの有無にかかわらず、社員にどんな副業をしてほしいか、どんな副業はしてほしくないか、というコミュニケーションが少ない。これが2点目。この2点の欠如によって、「残念な副業」が生まれているケースがあります。

 会社員経験しかない人は、副業を始めるときに、早朝や深夜の単純作業のアルバイトを探し始めがちなんです。これは単純作業が良い悪いという話ではなくて、自分の休息を切り売りするだけで、自分の本業とのシナジーがない。会社としても望ましい副業ではないでしょう。