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 個別の撮られ方に関するレッスンは1人10から15分ほど。冒頭のシーンの通り、橘田氏は撮影しながら「誰にどう見られたいか」を聞き、その思いや感情をあらわにするよう迫る。「感情が必ず写真に写り込む」という信念があるからだ。「顔を見られてるんじゃない。感情が表に現れた印象で決まる」。橘田氏はこう言う。

 同氏が「撮られ方」というスキルを提供しようと考え始めたのは2015年ごろ。プロのフォトグラファーとして撮影を続けていたなかで、「自信を持てない女性が増えた」と感じたのがきっかけだった。最初はプロのモデルが受講すると思ったら、素人の女性が大量に押し寄せて一気に人気講座の仲間入りを果たした。

 2時間の講座を取材してわかったのは、結局のところ「どう写りたいか」とは「どう生きたいか」の延長にあるということだ。「誰にどう見られたいか」の答えは、「どんな自分でありたいか」とニアリーイコールなのだろう。

 ストアカのウェブサイトに並ぶ橘田氏の「撮られ方講座」の受講レビュー欄には、写真のテクニックに関するコメントはほとんど見当たらない。「自信を持てなかったが、アドバイスで胸を張ることができるようになった」など、写真講座というよりもカウンセリングを受けたような感想が並ぶ。

 そのレビューを見て、「特に最近は、写真の写り方は二の次で、どうやって自信を持てばいいか分からないという女性が受講する割合が多くなってきた」と橘田氏は言う。

2019年に売れたスキルランキングを公開

 新しいサービスやテクノロジー、カルチャーが生まれると、それを使った新たな稼ぎ方が生まれる。CtoC(個人間取引)サービスの登場によって、これまで価値がないと思われていたスキルやモノに値段が付くようにった。橘田氏の「写真の撮られ方」というスキルが多くの人に届いたのは、スキルを売るためのプラットフォームができたからという理由が大きい。

 では、他に売れているスキルとは何か。ここからは、「2019年に売れた『スキル』」をランキング形式でみていく。上位には、トレンドを表す「ある共通項」があった──。

 自分が持っているスキルや経験、知識に広く市場価格が付くようになったのは、ウェブ上で個人で得意技や専門性をもとに「講座」を開設できるプラットフォームが現れてから。「スキルシェアサービス」と呼ばれるもので、日経ビジネスは、同サービス大手の「ストアカ」と「ビザスク」と共同で、2019年に売れたスキルや知識のランキングを調査した。

 「ストアカ」は主に個人向けのサービスで、メイクレッスンや料理教室などのライフスキルから、デジタルマーケティングやアイデア発想法などのビジネススキルまで数万種類の講座が並ぶ。「ビザスク」は「スポットコンサルティングサービス」とも呼ばれ、個人が持つビジネスの知識や経験を、主に企業向けに提供する。

 今回は「ストアカ」で「2019年に売れたスキル」のランキングを公開する。ランキングはスキル提供者による「教えた人数」順で、その人数をもとに、年間売上高を日経ビジネスが独自に推計した。「ビザスク」は次回(2月3日公開)、スキル提供者の世代別ランキングとして公開する予定だ。

「ストアカ」で2019年に売れた「スキル」ランキング
順位 主な講座 1年間で教えた人数 日経ビジネスが推計した年間売上高
1位 「インスタ映え」する料理教室 2700人 1290万円
2位 写真の「撮られ方」講座 2410人 2210万円
3位 ボイストレーニング 2100人 1380万円
4位 少人数制「伝わる話し方」 1950人 580万円
5位 1日で成長するPhotoshop 1800人 1530万円
6位 即使えるコピーライティング 1650人 660万円
7位 賃貸でもOKなリノベーション・DIY 1640人 820万円
8位 簡単ストレッチの方法 1350人 560万円
9位 トップクリエーターによるデザイン講座 1200人 450万円
10位 魚のさばき方 初級編 1160人 750万円
「ストアカ」を運営するストリートアカデミーの協力をもとに、「教えた人数」順に並べた。個人によって多数の講座を提供している場合が多いため、「主な講座」を例として挙げている。年間売り上げは日経ビジネスの推計値。