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 連載「両論激論」は、意見が割れているテーマに対し、両論の識者に取材してそれぞれの意見を掲載し、読者からの意見を募集する。災害や福祉、環境などの社会的なテーマから、ビジネスやテクノロジー、ライフスタイルまで、両論のメリット・デメリットを整理し、読者の皆さんと未来を考えていく。

 第2弾のテーマは「通勤電車の有料着席サービス」だ。追加料金を支払うことで着席を保証するサービスで、首都圏で大手私鉄が次々に採用している。このサービスは、利用者にとって選択肢が増えるからアリ? それとも混雑を助長するのでナシ? 読者の皆さんのお考えを記事下のコメント欄でお寄せください。

慢性的な「痛勤」の満員電車。追加料金による着席保証はアリ?(写真:Shutterstock)

 都内の大手私鉄などで、追加運賃を支払えば確実に着席できるサービスの導入が相次いでいる。1967年に小田急電鉄が箱根ー新宿で運用していた座席指定の特急列車の回送車両を通勤時間帯にも活用したのが始まりとされ、その後もじわじわと広がりを見せていたが、ここ数年で参入が加速。2017年3月に西武鉄道「S-TRAIN(S-トレイン)」、18年2月に京王電鉄「京王ライナー」、同年12月には東急電鉄が1両のみ座席指定制の「Q SEAT(Qシート)」を導入し、形態は違うものの首都圏の大手私鉄のほとんどが着席保証サービスのある列車を運行している。

 いずれも300~500円ほどを通常運賃に上乗せすることで、各席にコンセントが設けられていたり、車内Wi-Fiを備えていたりする車両が利用でき、朝夕の「痛勤」ラッシュ時の満員電車を避けたい会社員らの人気を集めている。

 ただ、着席保証サービスのある車両を使わない鉄道利用者からは不満の声も聞こえ、専門家の評価も分かれている。

 湘北短期大学の大塚良治准教授が「鉄道会社にも利用者にもメリットがある」と主張する一方で、日本女子大学の細川幸一教授は「一部の人が快適性を得る中で、しわ寄せも出てきている」と指摘する。両者の主張を掲載する。

選択肢が増え、利用者のメリットに

大塚良治・湘北短期大学准教授
広島国際大学講師等を経て現職。江戸川大学非常勤講師(観光まちづくり論・地域経営論担当)、東京成徳大学非常勤講師(観光地理学担当)、松蔭大学非常勤講師(監査論担当)を兼務。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

都内を中心に、有料着席サービスを導入する鉄道会社が増えている背景をどう見ていますか。

大塚良治・湘北短期大学准教授(以下、大塚氏):今後、首都圏でも人口減少が見込まれていて、鉄道の乗車人員も少なくなることが予想されます。インバウンド需要も見込まれていますが、確実なものではありません。そうすると、1円でも多く取れるところから取るという考えが出てきてもおかしくはありません。

 また、「確実に座れる」というメニューを増やすことで沿線の魅力の向上にもつながりうる。最近では鉄道利用者の平均乗車距離がどんどん短くなってきている傾向にあります。それは、より都心に近いところに住む傾向が強まってきているから。利用者に「つらい通勤時間」を少しでも減らしたい思いが強まっているというのも、理由なのでしょう。

 ただ、鉄道会社としては、乗車距離が長い沿線の郊外に住んでもらいたい。着席保証サービスを導入する背景には、そうした郊外から都心への人口流出を食い止める狙いもあります。

 そうした中で、もともと特急車両を持っていた一部の鉄道事業者だけでなく、持っていなかった事業者も着席保証サービスを行うことに舵(かじ)を切ったと言えます。

実際に鉄道会社の収益につながっているのでしょうか。

大塚氏:数億円規模で利益になっていると見ています。全体の純利益から見るとわずかかもしれませんが、金利では1%も稼げない時代ですから割はいいのではないでしょうか。