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堤防の強化は今後も必要

奥野真章氏
国土交通省水管理・国土保全局河川計画課河川計画調整室 企画専門官
2006年に国土交通省入省。2012年に国土交通省近畿地方整備局姫路河川国道事務所調査第一課長、2014年に国土交通省近畿地方整備局河川部河川計画課課長、2016年に国土交通省水管理・国土保全局河川計画課課長補佐を経て2018年から現職

台風19号をはじめ、大規模な災害が相次いでいます。今後の防災対策の中で、河川堤防についてはどのように強化していくことになっていますか。

奥野真章・国土交通省河川計画調整室企画専門官(以下、奥野氏):現在、気候変動で雨量が増加傾向にあります。懸念されるのが、雨の浸透による堤防の地滑りなどです。対策としては、堤防の幅を広げたり、護岸で覆ったりするなどが考えられ、(国交省では)堤防の新たな設計基準の検討を始めたところです。

現在、河川堤防はどれくらいあるのですか。

奥野氏:2017年時点で9103kmです。1990年は6556km、2000年は7722kmと年々整備が進んできています。

 今後もかさ上げしていく暫定堤防などは含まれていない数字ですが、整備率は約7割といったところです。

それでは、今後は新規整備と既存の堤防の強化が行われていくということでしょうか。

奥野氏:そうなると考えています。台風19号では約140か所で堤防が決壊しました。今後も流量が増えていくという観点で設備の強化が必要と言えます。

 先ほど、堤防の整備率は7割と言いましたが、仮に構造や高さといった基準が上がると、新たな基準を満たしていない堤防は改修が必要となってきますので、整備率が減少する可能性もあります。

当然、費用の増加も考えられます。

奥野氏:強化するとなれば、増える方向になると思います。すべての既存の堤防が新たな基準を満たしていればいいですが、それは難しい。

堤防はメンテナンス費用がかかるという意見もあります。

奥野氏:除草や雨などで削られたり、動物に穴を掘られたりといった箇所の点検はしなければなりません。維持管理費は結構かかっています。機械化などの省人化の取り組みも併せてやっていかなければなりません。

堤防ではない治水を求める声もあります。

奥野氏:治水は、ダムや遊水池など水をためて水位を低下させる機能と、河川堤防や河道掘削によって下流へ水を流す能力を向上させる機能によって行われています。

 基本的に気候変動で流量が従来の1.1倍や1.2倍になってくると、ますますためるものもためなきゃいけないし、堤防整備などで流していく必要性は高まります。ダムや堤防、遊水池など事業規模が大きいといった側面がありますが、完成すれば効果はあります。今あるものの活用と併せて整備は必要だと思います。

 ただ、我々の取り組みは予算も時間もかかりますし、限界もあります。そうした中では地元の方々にも洪水の危険性がある地域には住まないという都市計画の観点からの対策や、高規格堤防のように広範囲を盛り土するということも考えてもらう必要も出てきます。

 ただ、それには数十年とか、それ以上の年月がかかるし、住民の方々への影響も大きい。いかにして洪水から地域を守っていくか、効果やバランスも含めて向き合っていかなければなりません。

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