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簡単ではありませんが、維持管理がきちんと行われれば堤防の効果は大きいのでは。

宮村氏:堤防は、どこに造ったらいいかというのも大変難しい。今まで水があふれていたところに堤防を造ればそのリアクションはどこかにくるはずです。影響は対岸に行っちゃうかもしれないし、下流に行っちゃうかもしれない。

 しかも、堤防ができたとしても決壊しないとは限らない。従来よりも水位が高い状態で耐えられなくなって堤防が切れることになるから、以前よりも溢れた水が持つエネルギーははるかに強い。そんなにエネルギーが高くなければ、この家が流されることはなかったということも起こり得る。

 つまり、堤防というのは丈夫な高い堤防ができればできるほど、リスクはあるということも言えるんです。

これまで堤防が各地に整備されてきたのは、治水に有効だったからではありませんか。

宮村氏:堤防造りが本格的に始まったのは江戸時代からですが、その頃は大きなダムを造るなど他の防災設備を造る技術はなかった。つまり、仕方なく堤防を造っていたのです。でも、第2次世界大戦後にはダムの技術が堤防の技術を超えました。

 ダムは建設地域が沈んでしまうなど問題もありますが、堤防のように水害に対する戦線が広くありません。いうなれば、堤防のような「線」での対応ではなく、「点」での対応ができる。

激甚災害が頻発する中で、必要な対策とは何でしょうか。

宮村氏:根本的なこととしては、洪水が起こるようなところには住まないということになるとは思います。洪水の被害に遭う家というのは比較的新しい家が多い。逆に言えば、何十年、何百年もそこに残っている家というのは災害の教訓が生かされているから残っているとも言えます。

 すでに住んでいる人に別の場所に移住しろというのは非常に酷な話でもありますが、長い年月をかけてやっていくしかありません。

 都心部の海抜ゼロメートル地点などでは盛り土をして、所々に人工的に高台を造っていくことも考えていく必要がある。最終的には広範囲を盛り土にするいわゆる「スーパー堤防(高規格堤防)」となっていきますが、これは通常の堤防とはまったくの別物です。いかに周囲の土地をかさ上げして川床との高低差を大きくしていくかに重きを置いているのです。

 こちらもどうしても整備には長い年月がかかってしまいます。いずれにしても、腰を据えた都市政策が必要なのは間違いありません。