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政府は介護施設などへの「アベノマスク」の配布方針を転換した(写真:PIXTA)

 介護施設などに一律的に配られる予定だった通称「アベノマスク」と呼ばれる布マスクに関し、政府は配布する方式を転換した。加藤勝信・厚生労働相は7月31日、「現在のマスクの状況を踏まえ、希望する介護施設などに随時配布するやり方にしていきたい」と述べた。介護施設などからも「今必要なものは布マスクではない」といった声が出ており、余剰分は国が備蓄する。

 「一度決めたからといって突っ走るのはいい加減やめてほしい」「税金の無駄遣いも甚だしい」――。まだ政府が「マスクの継続配布は有意義」(菅義偉官房長官)としていた7月29日にこの政策への是非を「両論激論」コーナーの議題に挙げたところ、86%の回答が「支持しない」に集まった(8月2日時点)。

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 改めて振り返るが、この政策は新しいものではない。新型コロナウイルス感染拡大の緊急対策として504億円の予算がついている。「布マスクは洗って20〜30回ほど使えるので段階的に必要になる」(厚生労働省)。生産サイドの問題もあり、当初から数度に分けて調達・配布する予定だった。

 ただ、マスクを取り巻く環境は大きく変化した。4月当時は入手が困難だった使い捨てマスクは店頭に並ぶようになり、アパレルメーカーなどの布マスクも普及している。日経ビジネスの議論では「違約金を払ってでも止めるべきだ」(あめのもりさん)、「配布を止めるだけでもある程度の無駄使い回避にはなる」(foo-bowさん)といった声が相次いだ。

 一方、「支持する」としたのも全体の1割ほどあった。「中国でマスク生産からの撤退が始まっており、供給反動が発生しかねない。予防策として意義がないわけではない」(jawayさん)、「次のマスクパニックが絶対にこないとは言い切れない」(T.Oさん)といった理由からだ。

 世の中の逆風を受けた政府の対応は、おおむねこれらの意見を満足させるものだろう。8000万枚のマスクはすでに業者に発注しており、今更キャンセルはできない。そこで、希望する施設のみの配布とし、厚労省のホームページから申し込む方式に切り替えた。「結果として残るものがあれば次に向けて国で備蓄したい」(加藤厚労相)というのが新たな方針だ。

 政府は観光支援策「Go To トラベル」事業で、新型コロナ感染が再拡大しているにもかかわらず、東京都を除外して強行した。日経ビジネスの議論では66%が「不支持」を表明していた。7月中旬に東京都で突出していた新規感染者はその後、他県でも増えている。直近1週間の10万人あたりの感染者数では、沖縄県が最多となった。

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 新規感染者は8月1日まで2日連続で1500人を超え、改めて、PCR検査の拡充や病床の不足が課題となりつつある。状況が刻々と変わる中では、事態に合わせて柔軟に対応すること、透明性を高めて説明責任を果たしていくことがカギとなる。政府としても未曽有の非常時。私たちも過度な失望は抑えつつ、主体的に要望を伝え続ける努力をすべきなのだろう。

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