繰り返し利用できるという触れ込みの布マスク、通称「アベノマスク」が再び話題を呼んでいる。全世帯向けの約1億3000万枚は既に配り終えたが、介護施設や障害者福祉施設、保育所などには残り8000万枚の配布を今秋まで継続する予定だ。ただ、マスクの入手が比較的容易になっていることから、野党などから「税金の無駄遣い」といった批判が噴出。観光支援策「Go To トラベル」事業で民意を読みきれなかった政府への逆風が強まっている。

 今回の両論激論は、アベノマスクの継続配布の是非を聞く。

「アベノマスク」が再び話題を呼んでいる(写真:YUTAKA/アフロ)
「アベノマスク」が再び話題を呼んでいる(写真:YUTAKA/アフロ)

 「両論激論」コーナーでもすっかりおなじみとなった「アベノマスク」。1世帯あたり2枚の全戸配布は既に終えており、皆さんの手元にも届いたことだろう。ただ、介護施設や障害者福祉施設などへの配布は今も続いている。これに対し、立憲民主党など野党が「配っても使われない。税金の無駄遣いだ」とかみついた。

 少しおさらいをしておこう。新型コロナウイルスの感染拡大が急速に進んだ今春、安倍晋三首相は店頭でのマスク不足が続く中で布マスクに着目し、政府が調達して5000万戸あまりの全戸に2枚ずつ配布する方針を示した。この事業には約466億円の予算がつき、結局、約260億円をかけて6月までに全戸に配り終えた。

 これとは別に、介護施設や保育所などに配ることも決定。こちらには妊婦向け配布分も含め約504億円の予算がついている。厚生労働省によると、介護施設などの職員や利用者ら約2000万人に対し「当初から秋まで数度に分けて配布する計画だった」(マスク等物資対策班)。1人7枚分の計1億4000万枚を目安に、4月に2000万枚、6~7月に4000万枚を配布している最中だ。

 今、話題となっているのは残りの8000万枚。「追加配布というわけではなく、あくまでも1つの政策の中での進捗」というのが厚労省の言い分だ。業者への発注は既に終えており、事業見込み額は合計で約247億円。現在は一部の検品を進めている段階といい、政府は「継続配布は有意義」(菅義偉官房長官)と強調する。

 ただ、マスクを取り巻く環境は、政府が布マスク配布を決めた後の4カ月で大きく変わっている。アパレル各社が競うようにマスクの製造に乗り出し、使い捨てマスクもドラッグストアやコンビニの店頭に並び始めた。比較的入手しやすくなっていることから、「アベノマスク不要論」が従来以上に広がっているのは確かだ。

 政府は7月22日からスタートした観光支援策の「Go To トラベル」事業でも「一度決めた方向性を修正できない」と批判を浴びた。新規感染者が急増しているにもかかわらず、東京都の発着分を除外して決行したためだ。この政策への支持を両論激論で聞いたところ、66%が「支持しない」との意見だった。

(関連記事:[解説]混乱の「Go To」、経済・感染防止両立はかなうか

 政府からすると、既に手元に入る直前の残り8000万枚の布マスク。意思決定から製造までに時間がかかるのは仕方ないとはいえ、配るのにもお金はかかる。一部の介護施設や保育所からは「今必要なのは布マスクではない」との声も上がっており「必要があれば(対応を)検討することをしないでもない」(厚労省)。マスク騒動はまだ当面、続きそうだ。


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