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迷走する「Go To トラベル」事業。質問に答える赤羽一嘉国土交通相(右)と西村康稔経済再生担当相(写真:共同通信)

 政府による国内旅行の需要喚起策「Go To トラベル」事業が、東京都の発着分を除いて7月22日から実施されることになった。新型コロナウイルス感染の再拡大を受け、一部の知事らから「時期尚早」と異論も出ていた同事業。「全国一律の開始」という従来の枠組みを軌道修正し、観光業を支えるキャンペーンに踏み切った。

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 「島中がピリピリしている。都心の人は病院がたくさんあるからいいが、ここでは診療所くらいだ。コロナにかかったらと思うと、ぞっとする」。沖縄県のある離島に住む40代の男性はこう語る。話題は政府の「Go To トラベル」事業。コロナの影響で打撃を受けた観光業を下支えする取り組みだが、旅行者を受け入れる側の地方は戦々恐々だ。

 同事業は、国内旅行代金の半額相当額を政府が補助してくれるというもの。支援額は1人当たり1泊2万円が上限だ。例えば、2泊3日の旅行で料金が1人8万円だとすると、4万円を政府が負担してくれる。このうち7割の2万8000円は旅行代金からの割引、残り1万2000円は食事や土産購入に使える地域共通クーポンで支払われる。

 観光業が壊滅的な状況にあるのは確かだ。4月以降の訪日外国人は前年比99.9%の減少。全国のホテルの客室稼働率は2割を切る水準で推移し、老舗旅館の破綻も相次ぐ。都道府県をまたぐ移動が6月19日に解禁されても日本人旅行者の動きも鈍く、これから迎える夏休みシーズン、需要喚起の切り札として「Go To」への期待は大きかった。

 現在、観光業に携わる人らを支えるのは、コロナ対策で手厚くなっている雇用調整助成金だ。解雇せずに雇用を続けた場合の助成率は100%だが、特例の対象期間は4月1日から9月30日まで。これからのシーズンで持ち直せないと秋には失業者があふれる公算が大きい。「Go To トラベル」事業を管轄する国土交通省と観光庁も、開始時期を当初予定の8月から7月22日に繰り上げた。

 しかし、ここにきてコロナが再び猛威をふるい始めた。東京都の新規感染者数は7月9日に初めて200人を超え、16日には286人に達した。検査数が増えているとはいえ、1日当たりの新規感染者数は以前から国が重視してきた指標だ。大阪府でも66人とこれまで最多だった4月20日(84人)に近づいた。もはや、国も「東京問題」(菅義偉官房長官)と言っていられない状況だ。

 「Go To」は国の事業だが、全国の知事からは「全国一律はいかがなものか」(山形県の吉村美栄子知事)といった意見が多く聞かれた。東京都の小池百合子知事は15日に「よーく考えて」と念押し。大阪府の吉村洋文知事は「近隣県など小さい単位から始め、感染の様子を見ながら全国に広げていくべきでは」と提案していた。

 観光業と観光を基幹産業とする地方経済へのテコ入れは待ったなし。とはいえ、人の移動を促すことでコロナの感染拡大を助長するようでは本末転倒となる。その中で政府が選んだ妥協策が「東京の発着分を除く」という条件付き。ただ、東京に行くのが目的でも、近隣の千葉や神奈川を宿泊先(旅行先)としてそこから東京に移動するような場合をどうするかなど、「抜け道」への対応には課題が残りそうだ。

 観光庁総務課に問い合わせると、以下のような回答が返ってきた。

 ●東京居住者の確認について

 「詳細はこれから詰めるが、ネットや窓口での予約時やチェックイン時に、免許証や保険証などの本人確認書類で確認してもらう形になる。そこで事前に割引を適用する。国として、特に確認することはしない」

 ●食事や土産の購入に使うクーポン券について

 「基本的には現地で渡すことになる。そのため、クーポン券の準備ができるまでは渡せない。準備が出来次第、宿泊先のフロントなどで渡すことになるのではないか。こちらもまだ検討中だ。それまでは先行実施となり、(クーポン券で支給する旅行代金の)15%分は諦めてもらうことになる」

 この調子だと、22日に事業開始となっても、混乱は避けられなさそうだ。



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