東京都は7月10日、都内で新型コロナウイルスの感染者が新たに243人確認されたと発表した。9日の224人を超えて過去最多を連日で更新した。PCR検査の実施数が増加したことによるものと都は説明するが、潜在的な患者の多さが露呈した形だ。新型コロナウイルスの感染拡大防止策の1つとして6月19日にダウンロードが可能になった「接触確認アプリ」。新たな感染者の確認が増え始めた今こそ、その有用性が試される時ともいえる。日経ビジネス電子版の議論の場「Raise(レイズ)」では、読者の皆さんに接触確認アプリを使うか使わないか、その理由とともに意見を求めた。

>>[議論]普及目標は人口の6割、「接触確認アプリ」使いますか?

 寄せられたコメントを紹介しながら、議論の中身を解説する。

(写真:森田直樹/アフロ)
(写真:森田直樹/アフロ)

 接触確認アプリは7月3日から濃厚接触の可能性があった場合に通知を受けられるようになるなど、いよいよ本格運用が始まっている。より多くの国民がアプリを入れなければサービスが機能しづらいとされ、安倍晋三首相は会見で「人口の6割近く」という利用目標を掲げた。

 Raiseでは使うとの回答が51%と半数を占めた。一方、使わないとの回答も36%と多かった。

 使うと回答した読者からは、「自分の感染防止のために使わない選択肢はない」(加藤忠義さん)、「一人ひとりが最低限できることを始めないと変わりません」(Yoghurtさん)、「家族や同僚に迷惑をかけるリスクが多少なりとも軽減できるなら利用すべきだ」(直さんさん)といった声があった。

 このアプリを使ったから感染を防げるというわけではないが、活用することで自身の感染リスクをいち早く知れば、さらなる感染拡大を防ぐことにつながるとの考えが多い。

 一方、4割弱を占めた「使わない」と回答した読者の意見も見てみよう。「接触通知を受信したことにより直ちに検査してもらえ、感染の有無が把握できるなら意味はある。しかし、一定の症状が現れなければ検査対象とならないようでは、不安と他に感染させてしまう恐れを持ち続けて生活せざるを得ない」とはhiroさんの意見だ。PCR検査を受けるまでのハードルはいまだに高いという批判が多い中、感染リスクを知るだけではなく、その後の検査体制をきちんと整備すべきだという意見だ。

 m.katsuhiroさんは「使わないというより使えない」とし、その理由として「スマホの機種が古くて対応していない」点を挙げる。スマホの基本ソフト(OS)が古いと対応しない、あるいは「スマホの空き容量がない」(Rさん)など「使いたくても使えない」ユーザーも一定数いるようだ。

 「どちらでもない」の回答では、「安定するまではインストールするつもりはない」(minoさん)など、アプリ自体の完成度が高まったことを確認できるまで利用は様子見する意見も散見された。

「陽性」登録者はわずか3人

 接触確認アプリは3日から濃厚接触の可能性があった場合に通知するサービスを開始したが、その機能を本格活用していくためには、まずPCR検査を受けて陽性と診断された患者が保健所経由で通知される8桁の番号をアプリに自ら登録する必要がある。

 厚生労働省によると、8日午後5時時点で陽性患者によるアプリへの登録はわずか3人にとどまっているという。アプリで通知を受けられるようになった3日から7日までに新規で陽性と判明した患者は全国で1100人を超える。そのうちたった3人しかアプリに登録していないとなれば、濃厚接触の有無を確認するツールとして使えるとは言い難い。

 むしろ、「陽性者との接触は確認されませんでした」とのメッセージを受けて自分は感染していないと考え、外に出歩いてしまう人が増える危険性もある。

 アプリのダウンロード数も約632万件(9日午後5時現在)にとどまる。感染拡大防止に役立つアプリにするためには、ダウンロード数の増加だけでなく、陽性と判明した際にきちんと登録するまでの仕組みを作る必要がある。

【議論への参加方法】

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>>[議論]普及目標は人口の6割、「接触確認アプリ」使いますか?

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