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 一律10万円を給付する「特別定額給付金」のオンライン申請に関連して、マイナンバーカードが注目を集めている。日経ビジネス電子版の議論の場「Raise(レイズ)」では、読者の皆さんにマイナンバーカードの交付を申請するかどうか、その理由と共に意見を求めた。

[議論]新型コロナ対策を機にマイナンバーカードを申請しますか?

 寄せられたコメントを紹介しながら、議論の中身を解説する。

マイナンバーカード関連の手続きに訪れた住民らで混雑する東京都品川区役所のロビー(写真:共同通信)

 新型コロナウイルス対策として、全国民に一律10万円を給付する「特別定額給付金」を巡り、注目を集めたマイナンバーカード。読者参加型の議論の場「Raise(レイズ)」では、5月15日に「[議論]新型コロナ対策を機にマイナンバーカードを申請しますか?」を掲載し、6月9日までに読者100人から意見が寄せられた。「申請する」「既に持っている」という「受け入れ派」が3分の2を占めた。「既に持っている」は約55%と、全国の人口に対する普及率16.4%(2020年5月1日時点)と比べて高い割合となった。

 マイナンバーカードの交付を申請するかどうかについて、(1)申請する(2)申請しない(3)既に持っている(4)持っていないが申請するかどうか決めていない――のいずれかを選んでもらった結果は、下の図のようになった。

 ただ、寄せられたコメントを分析すると、「受け入れ派」の全てが必ずしも現状に満足しているわけではなく、不満や不安を抱えている実情が浮き彫りとなった。まず多く寄せられたのが「使い道に困る」との意見だ。

 「既に持っていますが活用の場がほとんどありません」(maroyakaさん)

 「コンビニで(住民票を取得するなどの目的で)使うぐらいなので、使用範囲が狭すぎる」(爺さん)

 など、使い勝手の悪さを指摘する声が「受け入れ派」の2割超に達した。確定申告やコンビニエンスストアでの住民票取得、運転免許証がない人には身分証になるというメリットを挙げるコメントもあったが、「今回の(定額給付金の)申請はすぐに終わり、正直うれしかった」(メーオさん)といった声は数件にとどまった。

 「リスクはあっても、日本を便利で住み良く効率の良い国にするためには積極的に参加したいと思って取得したが、用途が限定的でがっかりしている」(石田修治さん)

 といった意見がマイナンバーカードの普及停滞の原因を表しているようだ。

個人情報とのひも付けに伴うリスク

 読者の意見が分かれたのは、マイナンバーカードと個人情報をひも付けることへのリスク許容度についてだ。「(2)申請しない」の回答理由のほとんどが、「利用メリットとリスクが見合わない」という意見だった。

 「これまで多くの大企業や自治体から情報流出が起きていること(中略)を考えると、(中略)もっと政府が利用者のことを考えて、セキュリティーやサービスを充実させてくれないかぎり、申請する気はない」(SHさん)

 「(カードを)紛失したときのことを考えると怖くて持ち歩くことは考えられない」(Taroさん)

 「何のメリットもないのに、なんで個人情報が漏洩するリスクを増やさなければならないのかわからない」(tsukuyomiさん)

 といったコメントが並んだ。

 また、「(2)申請しない」の回答者からは、「カードを持つことはやぶさかではないが、義務化されていないから申請しない」という意見も出された。

 「政府が、個人資産の把握の為にやっていると思うが、それであれば『自由意思で入る』今の制度では意味がなく、『強制的』に入らせるようにして、富裕層や違法な組織の資産を暴き出すようにさせる事が必要だと思います」(ナルさん)

 「さっさと義務化すればよいのです。マイナンバーカードでしかできないことをどんどん増やせばいい。『公権力』が個人情報を十分把握していれば、今回の新型コロナウイルス関連の経済的支援策だって、もっときめ細かくできて、メディアの皆さんに叩かれなくて済んだでしょう」(basementapeさん)

 などといった意見があった。政府の中途半端な取り組みがマイナンバーカードの申請意欲をそいでいる。

 高市早苗総務相は6月9日、マイナンバーに預貯金口座の1つを登録することを義務化する方針を示した。政府がまた今回のように給付を行うときに振り込み先の口座を把握しておけば、迅速な実行や行政コストの削減に貢献するとの狙いだ。当初は個人が所有する全口座のひも付けを検討していた。個人資産の把握が容易になり、脱税を防ぐ効果も期待できたが、今回は見送った。

 マイナンバーは既に全国民に割り当てられている。マイナンバーカードがなくても個人情報とマイナンバーの連携が今後進む可能性はある。にもかかわらず、カードの使い勝手が悪くて国民がメリットを感じられないようであれば、不信と反発を生む。現状のままでは、「将来カードが普及し、中国のような監視社会になるのはごめんだ」(岩間昌一さん)といった嫌悪感を招くばかりだろう。

 「公権力が個人情報を把握、活用することの是非に関しては、『公権力怖い』で思考停止するのはあまりにもったいない」(Nobbie.T)

 などといった意見もあり、読者の多くは、メリットとリスクを議論する準備はできている。

 また米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)をはじめとするプラットフォーマーに、「銀行口座、クレジットカード、Web上の行動履歴・購入履歴をはじめ、個人情報は様々な場面で収集されて」(MAXさん)いる。個人情報を門外不出にして生活していくことは避けられない世界になっている。

 政府には、国民へ提示できる「メリット」を再構築し、議論の前提を早期に整えてほしい。

【議論への参加方法】

マイナンバーカードの申請の是非に関する議論には、以下のページから参加できます。

>>[議論]新型コロナ対策を機にマイナンバーカードを申請しますか?

新型コロナウイルス対策で在宅勤務が広がっています。それに伴い、従来の日本型の雇用モデルを改め、海外で主流の「ジョブ型」雇用へ移行する動きが活発になっています。雇用の在り方に関する議論も実施しています。ぜひ、ご参加ください。

>>[議論]在宅勤務浸透で広がる「ジョブ型」雇用、賛成/反対?

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