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マイナンバーカードの手続きで混雑する品川区役所のロビー。撮影は5月11日(写真:共同通信)

 新型コロナウイルス対策として、全国民に一律10万円を給付する「特別定額給付金」を巡り、マイナンバーカードがにわかに注目を集めている。給付金のオンライン申請を促して感染症対策にもなるはずだったが、市区町村の窓口に来庁者が相次ぎ、かえって「密」を生む皮肉な事態になっている。

 「来庁いただく必要のない、郵送申請をご検討ください」

 東京都品川区はTwitterで区民にこう呼びかけている。マイナンバーカードの暗証番号や署名用電子証明書のパスワードを忘れたり、住所変更などでカードが失効したりして、窓口を訪れる人が増えているからだ。

 2008年のリーマン・ショック時に実施した給付金は、郵送手続きで実際の支給が翌年になったという反省から、オンライン申請の迅速さが期待されていた。米国は社会保障番号を活用して政府が銀行口座に支援金を振り込み、法律成立から約2週間で支給が始まっている。

 マイナンバー制度は、外国人を含む住民票を持つ全ての市民に付与される12桁の番号。2016年に運用が始まったが、マイナンバーカードの交付枚数は20年4月1日時点で2033万枚、普及率は全国で16%にとどまっている。

 そもそもカードの利点はどこにあるのか。顔写真付きの身分証明書になるほか、住民票や印鑑証明がコンビニエンスストアで入手できたり、児童手当や保育園入所の申請がオンラインでできたりする。それなりに便利だが、必要とする人が限られるというのが実情だった。

 2020年からはスマートフォンによる確定申告でマイナンバーカードを使えるようになるなど、利便性を向上させる施策が実施される。20年9月には、カード保有者にキャッシュレス決済で使える1ポイント=1円の「マイナポイント」を最大5000円分付与する制度が始まるほか、21年3月には健康保険証としての運用が本格的に始まる予定だ。新型コロナ給付金がなくとも、「マイナンバーカードを広める最後のチャンス」(政府関係者)といわれていた。

 給付金申請で大きくつまずいたマイナンバーカードだが、突き詰めると政策決定に個人情報をどこまで活用させるかの問題に行き着く。「一律10万円」に変わる前の「減収世帯に30万円」案も、マイナンバーと給与口座、納税データがひも付いて所得や雇用形態を把握できていれば、必要な人にピンポイントで素早く支援することができたとの指摘がある(※現状では、口座がある銀行へのマイナンバー登録は任意で、義務化は検討課題)。また、金額にかかわらず、マイナンバーカードにポイントを付与して、現金と換えたりキャッシュレス決済として使えたりすれば、振込手数料など事務コストを大幅に減らせる。

 一方で、「オンライン申請に普及率が低いマイナンバーでなく運転免許証などを使えば良かった」「情報漏洩が不安」との声も出ている。

 海外では公権力が個人情報を活用して、感染症対策に生かしている。台湾はICチップ付きの健康保険証で個人のマスクの購入履歴を把握し、買い占めを防いだ。韓国は住民番号と保険証、銀行口座、クレジットカード、携帯電話情報を連携させ、マスクの買い占め防止や感染者の行動経路把握に活用したという(関連記事:自由と外出規制はどちらが優先?- 萱野稔人教授(1))。

 日本は政府への信頼度が伝統的に低く、出遅れ感は否めない(関連記事:国際政治・中西寛教授「新型コロナは“平成アナログ”を破壊する」)。危機が起きる前から、個人情報をどこまで公権力に預けるかの議論は重要だ。


議論のテーマ

 あなたはマイナンバーカードを申請しますか? また所得など個人情報との連携をどこまで受け入れられますか。ご意見をお寄せください。

【コメント投稿の方法】

 あなたはマイナンバーカードを申請しますか? まず以下の4つから選んでください。

(1)申請する
(2)申請しない
(3)既に持っている
(4)持っていないが申請するかどうか決めていない

 その上で、それぞれの理由をお答えください。また、公権力が個人情報を把握、活用することの是非や、所得などの個人情報とマイナンバーの連携をどこまで許容できるかなどについても、コメント欄にご意見をお寄せください。