
総務省などは3月末、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクの携帯3社に加えて、ヤフーや楽天などのIT大手6社に対して、新型コロナウイルス対策としてサービス利用者の関連データを提供するよう協力を求めた。LINEは厚生労働省と協定を結び、体調や居住エリアなどを国内8300万ユーザーに聞く大規模調査を3回にわたって実施している。データを活用して、感染拡大の仕組み解明などに役立てるというものだが、有事とはいえ国が民間企業が持つデータの提供を要請するという点を危惧する声もある。
各社はデータ提供に協力する姿勢を示している。NTTドコモは「モバイル空間統計」を提供する見通し。1時間ごとの人口分布などのデータで、「個人は特定しないうえ、既に外販している情報のため問題はない」とする。
ヤフーの川邊健太郎社長CEO(最高経営責任者)は「外部の有識者も交えて慎重に検討をした結果、現状の深刻さに鑑みて協力する」と判断した。ヤフーは2019年7月に開始した信用スコア事業を巡り、ネット上で「個人情報が勝手に外部に提供される」という観測が広まって炎上した過去があり、慎重な姿勢を見せる。
海外では、コロナショックを機にスマートフォン(スマホ)のデータなどを使って個人の行動をチェックする動きが広がりつつある。英国では国民保健サービス(NHS)の技術部門が、スマホのアプリを使って、新型コロナウイルスに感染した疑いがある人を特定するサービスを開発。感染が拡大するイタリア北部のロンバルディア州ではスマホの通信データを使って、人々の動きを把握できるようにしている。英ボーダフォンは、同州に協力し匿名の情報を提供しているとの声明を出す。
オーストリアでもテレコム・オーストリアが匿名データを政府に提供している。イスラエルは感染者の動きを把握するために、スマホのデータを使う法案を可決した。
米アップルと米グーグルは10日、スマホのブルートゥース機能を活用して、新型コロナウイルスの感染者と接触したことを通知するシステムを共同開発すると発表した。スマホの基本ソフト(OS)の2台巨頭が組み、世界で50億台規模のデータで新型コロナウイルスの感染拡大の抑止につなげるというものだ。
莫大なデータを持つプラットフォーマー。その活用によって感染可能性の有無や感染拡大のメカニズムの解明につながればとても有益だといえる。一方、中国のように国が個人に発行するIDとスマホのアプリなどを連携して個人の動向を監視することに発展する可能性も否定できない。
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