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1年あまりのジョブレス期間を経て今年3月からスタートアップのエール(東京・品川)の取締役に就任した篠田真貴子氏。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急速に導入が広がっている「リモートワーク」についてのモヤモヤ感をフェイスブックに投稿したところ、自律自走型の人材育成と組織文化醸成を手掛ける楽天大学学長の仲山進也氏と、全社員リモートワークというソニックガーデン(東京・世田谷区)社長の倉貫義人氏が、「リモートワークはやっぱり駄目だ、とならないために言っておきたいことがある」と議論に手を挙げた。

  • ・これまで、多くの大企業がいろいろな理由を付けて「リモートワークの導入は難しい」と言っていませんでしたっけ?
  • ・1~2週間やってみて、「うまくいかなかった」といって、また元の働き方に戻ろうとしていませんか?
  • ・リモートワークが効率的にできない理由は、本当に「リモート」だからですか?

リモートワークにまつわる「モヤモヤ感」をみんなで吐き出して、どうやったらうまくいくか、知見を共有して考えよう。オンライン会議ツールZoomを使って急きょ実現した、篠田氏、仲山氏、倉貫氏による座談会をご覧いただき、ご意見をお寄せください。

【3人の議論のポイント】
●「出社組」と「リモート組」の分断問題
●リモート組が感じる「後ろめたさ問題」
●eメールが職場に登場したときと似ている
●最初は快適だったけど、寂しくなってきた?
●オフィスの良さは「人の気配」
●仮想オフィスでも“ザワザワ感”を可視化する
●“6メートル以内のチーム感”をどう再現するか
●オンラインでの“いいチーム”の作り方は?
●「自己管理できるかどうか」はリモートとは無関係
●成功のポイントは「タスクばらし」と「ふりかえり」
●成功体験を積む前に管理しようとしてはいけない
●「いつか元の働き方に戻す」という前提は捨てよう
●“逆戻り”は経営への信頼を損なう
●「いい仕事」の定義をアップデートしよう

(写真:PIXTA)

篠田真貴子氏(エール取締役、以下、篠田氏):仲山さん、倉貫さん、今日は急きょ、Zoomのオンライン会議にお集まりいただき、ありがとうございます。新型コロナウイルスの感染が広がったことで急速に普及している「リモートワーク」について、皆さんと議論したいと思います。

 今回の企画が立ち上がったきっかけは、私が感じていた素朴な疑問をフェイスブックに投稿したことでした。

篠田真貴子氏 エール取締役
日本長期信用銀行、マッキンゼー、ノバルティス、ネスレを経て、2008年にほぼ日(旧・東京糸井重里事務所)入社、CFO(最高財務責任者)に。2018年11月に退社し、「ジョブレス」期間を経て2020年3月より現職

 2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、リモートワークを急きょ導入する企業が増えて行く中で、ふと、「アレはどうなった?」と思ったんです。

 “アレ”とは何かと言うと、新型コロナの問題が出る以前からリモートワーク導入の是非に関する議論はありましたが、多くの大企業が「我が社には到底できない。なぜならば……」と言って、できない理由をいくつも挙げていたことです。例えば、労務管理の難しさや情報漏洩のリスクといった理由です。私自身は、この20年ずっとリモートワークが可能な環境で働いてきましたが、これらの理由は、「そういう企業もあるだろう」と納得できる側面もありました。

 ところが今回、これまで言ってきた「できない理由」をとりあえず脇に置いて、大企業の多くが準備不足の状態でリモートワークに踏み切っています。だとすれば、これまで指摘されていた「できない理由」は未解決のままなので、この状態が続くと結局は“揺り戻し”が来て、「リモートワークって駄目じゃん」となるのではないかと心配になりました。これが、私のモヤモヤの理由です。

 そのモヤモヤした気持ちを「皆さん、その点はどう思いますか?」と真面目に問いかける投稿をしたところ、仲山さんがすぐに「聞いてほしい話が山ほどあります」とコメントをくださったんですよね。

仲山進也氏(楽天 楽天大学学長、以下、仲山氏):僕の専門の1つがチームビルディングで、かつ自分自身、リモートワーク歴が16年なのですが、今回のことでリモートワークを初体験した方々のSNSへの投稿などを見ていると、誤解があるなと思っています。

仲山進也氏 楽天 楽天大学学長
シャープを経て創業期の楽天に入社。2000年に楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員(兼業自由・勤怠自由の正社員)となり、2008年に自らの会社である仲山考材を設立

 リモートワークをやってみて、「いつもよりはかどった」などポジティブな声も多いのですが、「やっぱりうまくいかない」という声も増えつつあります。実は、その“うまくいかなさ”には、「リモート」がうまくいってない場合と、「ワーク」、つまりそもそものチームワークがうまくいってない場合があります。そこをごちゃ混ぜにして評価してしまうと、「リモートワークって駄目だよね。やっぱり顔を合わせて仕事をすることは大事だったんだ」と誤って結論づけてしまうことになりかねません。それはあまりにももったいないな、と思って、この分野の先駆者である倉貫さんもお誘いしました。

倉貫義人氏(ソニックガーデン社長、以下、倉貫氏):ありがとうございます。僕はソフトウエア会社を経営していて、7年前から、僕も含め社員全員リモートワークに切り替えました。それ以前からも試行錯誤をしてきて、いろいろなノウハウが蓄積してきた2015年に『リモートチームでうまくいく』(日本実業出版社)という本を出しました。ここ数週間で一気にお問い合わせが増えて、忙しくしています(笑)。

仲山氏:リモートワーク初心者が思いつく問題点のほとんどを倉貫さんは解決済みなんです。

篠田氏:頼もしい! ではさっそくですが、現在の世の中の状況を見ていて、倉貫さんが一番気になることは何ですか?  見切り発車型のリモートワーク導入企業で起きている“あるある問題”を教えてください。